黄金郷の夢

文月 沙織

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調教開始 六

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(なんとかして、この状況から逃げねば……)
 おぞましい……とは思いつつ、目はやはり最初に見た諸卿らの贈答品に引き寄せられてしまう。
 高価な宝石箱のなかに見た、あの卑猥な淫具のかずかず……。
(あ、あんなものを使われたら、本当に私は狂ってしまう)
 そのうえ、隅に鎮座しているように置かれてある、……あの不気味な木馬。
 おののきながらも、アベルは己を待ち受ける拷問具にまた目を向けてしまう。
 黒檀でつくられたその木馬は広間の壁際の燭台の灯りのもと、油でも塗ったかのようにいっそう黒々と見える。しかも、その背には、同じく黒檀作りの、濡れ濡れとした責め具が設置されているのだ。アベルは見ているだけで泣きそうになった。おぞましいその木馬が生あるもののように思え、自分を責めいたぶろと待ち受けているようにすら思える。
 アベルは憎しみすら込めて木馬を恨みの目で見ていた。
「どうした? あの木馬に乗りたくてうずうずしておるのか?」
 ディオ王がいきなりアベルの上半身を包みこむように抱きしめてくる。
「ち、ちが……!」
「よしよし。欲張りな奴じゃ。だが、あの木馬はまだ当分おあずけじゃ。あれを乗りこなせるようになるまえに、そなたのここを、」
「ひぃっ!」
 ふたたび秘部に指を一本忍びこまされ、アベルは全身をこわばらせる。
「ちゃんと馴らさねばな」
「よ、よせ!」
 羞恥に身もだえするアベルを楽しくて仕方がないという顔で見ていた王だが、区切りをつけるようにいったん身体をはなした。
 数秒はほっとしていたアベルの耳に、王の低い美声が響く。
「カイ、エリス、アーミナ。参れ」
 客たちの給仕をしていた侍童たちのなかから、三人の少年たちが小走りで近寄ってくると、三人ならんで王の前に跪いた。
 三人とも黒髪に黒い目で、背丈も身体付きもよく似ているが、それぞれ赤、青、黄色という貫頭衣かんとういをまとっており、頭のターバンには衣と同色の宝石が飾り止めとしてきらめいている。
「この子たちは皆宦官で去勢を済ませておる。三人とも今年で十四になる。そうだったな?」
「はい、陛下。わたくしは先月十四になりました。エリスは来月に。アーミナはあと三月で十四でございます」
 答えたのは赤い衣をまとったカイと呼ばれた侍童であった。
 受け答えからして利発そうだが、アベルは別のことが気になって、思わずカイを凝視していた。
 少年宦官という一種異形の生き物をまえに、アベルは息を飲まざるを得ない。ハルムのような初老の宦官とちがって、これから人生を謳歌しようという時期にすでに男性の象徴をうしなった存在を前に、複雑な哀感をおぼえたのだ。
 だが、自分を見返す少年宦官たちの目には不敵な光がこもっていることにも気づいた。
「これからはこの者たちがそなたの世話をする。そして、そなたの調教を受け持つことになる」
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