11 / 150
凌辱の宴 七
しおりを挟む
ドミンゴの言うとおり、伯爵家の財政は逼迫している。先代伯爵であったアベルの父の放蕩がひどかったせいだ。それでも債権者が屋敷に押しかけてこないのは、まがりなりにも伯爵家の地位と名を重んじてくれているのと、若くして爵位を継いだアベルが女王の信頼あつく、そのうち手腕を発揮して伯爵家の財政を盛りたてて借金を返済してくれるだろうと信用してくれているおかげだ。それなのに、ここでもし女王の怒りを買い、失寵するようなことになれば、それこそアルベニス伯爵家は終わりだ。
「アベル様、そのお役目に耐えていただくことは出来ませんか?」
「……」
アベルはまさか忠義者のドミンゴにそんなことを言われるとは思いもよらず、彼を凝視していた。
「……本気で言っているのか?」
「……私には伯爵家とアベル様がおなじぐらい大事です。伯爵家を潰すわけにはいきません」
「従者の言うとおりですな」
その声に驚いて振り向くと、そこにはハルムと宦官たちが立っていた。扉は開けはなたれている。
「まったく賢明な従者です。さ、アルベニス伯爵、こちらへ。今から陛下の花嫁としての義務を果たしていただきますぞ。客も皆待ちくたびれておるわ」
「……い、いやだ! 来るな!」
「それ、ひったてい!」
命令によって迫ってきた宦官たちを前に、アベルは剣を捜したが、うろたえている彼を尻目に宦官たちはドミンゴに群がった。
「おい、ドミンゴに何をする?」
「人質だ。牢につないでおけ」
「よせ、乱暴するな!」
ドミンゴはあわてることなく、諦めたように宦官たちに身をゆだねている。
「大丈夫ですよ、アベル様。私のことは心配しないでください」
二人の宦官に両脇を抱えらえるようにして連れ去られていく従者をなすすべもなく見送っているアベルに、ハルムは勝ち誇ったように告げた。
「もし今後また先ほどのような真似をすれば、あの者の首を刎ねることになる」
冷酷な言葉を投げつけてから、ハルムはさらに低い背をのけぞるようにして告げる。
「アルベニス伯爵よ、なにも命を奪うわけでも、顔や身体に傷をつけるわけでもない。ただ、ほんのしばらく陛下のお相手をすればそれで済むことじゃ。使命を果たせれば、忠実なあの従者ともども、胸を張ってグラリオンを出、祖国では女王の信頼を得ることができるのじゃ。ここはひとつ賢くなられては? さ、参るとするか。先ほどから早く連れて参れという、陛下の催促の使者がひっきりなしに来ておるのだ」
「アベル様、そのお役目に耐えていただくことは出来ませんか?」
「……」
アベルはまさか忠義者のドミンゴにそんなことを言われるとは思いもよらず、彼を凝視していた。
「……本気で言っているのか?」
「……私には伯爵家とアベル様がおなじぐらい大事です。伯爵家を潰すわけにはいきません」
「従者の言うとおりですな」
その声に驚いて振り向くと、そこにはハルムと宦官たちが立っていた。扉は開けはなたれている。
「まったく賢明な従者です。さ、アルベニス伯爵、こちらへ。今から陛下の花嫁としての義務を果たしていただきますぞ。客も皆待ちくたびれておるわ」
「……い、いやだ! 来るな!」
「それ、ひったてい!」
命令によって迫ってきた宦官たちを前に、アベルは剣を捜したが、うろたえている彼を尻目に宦官たちはドミンゴに群がった。
「おい、ドミンゴに何をする?」
「人質だ。牢につないでおけ」
「よせ、乱暴するな!」
ドミンゴはあわてることなく、諦めたように宦官たちに身をゆだねている。
「大丈夫ですよ、アベル様。私のことは心配しないでください」
二人の宦官に両脇を抱えらえるようにして連れ去られていく従者をなすすべもなく見送っているアベルに、ハルムは勝ち誇ったように告げた。
「もし今後また先ほどのような真似をすれば、あの者の首を刎ねることになる」
冷酷な言葉を投げつけてから、ハルムはさらに低い背をのけぞるようにして告げる。
「アルベニス伯爵よ、なにも命を奪うわけでも、顔や身体に傷をつけるわけでもない。ただ、ほんのしばらく陛下のお相手をすればそれで済むことじゃ。使命を果たせれば、忠実なあの従者ともども、胸を張ってグラリオンを出、祖国では女王の信頼を得ることができるのじゃ。ここはひとつ賢くなられては? さ、参るとするか。先ほどから早く連れて参れという、陛下の催促の使者がひっきりなしに来ておるのだ」
0
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説


青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる