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凌辱の宴 四
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「おい、ハルム、なんとかしてくれ!」
「とにかくお身体を洗われよ。忘れ物を取りに行くのはそれからでもよろしいでしょうが」
たちこめる熱い湯気のせいで、女たちのなめらかな飴色の肌にも真珠のような汗が浮いている。黒い髪は藻のように彼女たちの背にからみつき、アベルはまるで物語に聞く魔性の人魚たちに囚われた冒険者になった気分だ。
(あ……)
あっという間に下半身を露にされてしまい、羞恥に身体を固くさせたが、女たちの繊手が伸びてきて、身体じゅうをまさぐる。
「お、おい!」
身体のきわどい所までまさぐられ、アベルは苦しくなってきた。桶に汲んだ温かい湯を次々とかけられていなかったら、見苦しい姿を見せてしまっていたかもしれない。
「ほう……」
気づくと、ハルムが濁った目でアベルの身体を文字通り舐めるように見ている。
「アルベニス伯爵は、なかなか見事なお身体をお持ちで……。衣の上からでは女のように細身に見えたが、かなり筋肉もついておるようじゃな……」
感心したようにハルムが乾いた手を腹に伸ばしてくる。あわや悲鳴をあげそうになったが、アベルはこらえた。
「剣や弓矢の稽古で鍛えているからな……」
幼いころは外見のせいで少女と見間違えられたことが度々あり、同年代の貴族の子どもたちからはよくからかわれた。その劣等感のせいか、人一倍武芸に励んだ。
「ほう。それは、それは……、なかなかお転婆な花嫁御寮で」
「おい、いい加減にしてくれないか。馬鹿なことを言っていないで、ディオ王の酔狂を止めてくれ」
ハルムは首をふった。湯気のもたらす熱気のせいで、額にはうっすら汗がはりついている。
「酔狂などではございません。陛下がお待ちかねですぞ。さ、おまえたち、そろそろ婚礼衣装をお持ちしろ」
「お、おい!」
女たちに手を引かれて控えの間に連れていかれると、布で身体を拭かれる。清潔な帯布を腰に巻かれ、一瞬安堵したが、背にべっとりとしたものを感じてアベルはまた驚いた。
「なんだそれは? おい!」
逆らう間もなく、背や腕、脚にべたべたとした油のようなものを塗りこまれてしまう。
「なんだ、これは? 奇妙に匂いがするぞ」
「麝香じゃよ。良い香じゃろう? 女たちは男を迎える前に気に入りの香の入った油を肌に塗るのじゃ。帝国でもそうであろう?」
香油だ。そういう話は聞くが、それはあくまでも女だ。男でも香水をつける者はいるが、アベルはそういったことには一切関心がない。肌がべたつくのが気持ち悪くて仕方ない。
「さ、お召しものを」
女の一人が捧げた箱には、白い衣が見える。
別の女が取り出して見せると、それは透けて見えるような薄布で、夜霧を編んだようなその衣にアベルはたじろいだ。
「とにかくお身体を洗われよ。忘れ物を取りに行くのはそれからでもよろしいでしょうが」
たちこめる熱い湯気のせいで、女たちのなめらかな飴色の肌にも真珠のような汗が浮いている。黒い髪は藻のように彼女たちの背にからみつき、アベルはまるで物語に聞く魔性の人魚たちに囚われた冒険者になった気分だ。
(あ……)
あっという間に下半身を露にされてしまい、羞恥に身体を固くさせたが、女たちの繊手が伸びてきて、身体じゅうをまさぐる。
「お、おい!」
身体のきわどい所までまさぐられ、アベルは苦しくなってきた。桶に汲んだ温かい湯を次々とかけられていなかったら、見苦しい姿を見せてしまっていたかもしれない。
「ほう……」
気づくと、ハルムが濁った目でアベルの身体を文字通り舐めるように見ている。
「アルベニス伯爵は、なかなか見事なお身体をお持ちで……。衣の上からでは女のように細身に見えたが、かなり筋肉もついておるようじゃな……」
感心したようにハルムが乾いた手を腹に伸ばしてくる。あわや悲鳴をあげそうになったが、アベルはこらえた。
「剣や弓矢の稽古で鍛えているからな……」
幼いころは外見のせいで少女と見間違えられたことが度々あり、同年代の貴族の子どもたちからはよくからかわれた。その劣等感のせいか、人一倍武芸に励んだ。
「ほう。それは、それは……、なかなかお転婆な花嫁御寮で」
「おい、いい加減にしてくれないか。馬鹿なことを言っていないで、ディオ王の酔狂を止めてくれ」
ハルムは首をふった。湯気のもたらす熱気のせいで、額にはうっすら汗がはりついている。
「酔狂などではございません。陛下がお待ちかねですぞ。さ、おまえたち、そろそろ婚礼衣装をお持ちしろ」
「お、おい!」
女たちに手を引かれて控えの間に連れていかれると、布で身体を拭かれる。清潔な帯布を腰に巻かれ、一瞬安堵したが、背にべっとりとしたものを感じてアベルはまた驚いた。
「なんだそれは? おい!」
逆らう間もなく、背や腕、脚にべたべたとした油のようなものを塗りこまれてしまう。
「なんだ、これは? 奇妙に匂いがするぞ」
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香油だ。そういう話は聞くが、それはあくまでも女だ。男でも香水をつける者はいるが、アベルはそういったことには一切関心がない。肌がべたつくのが気持ち悪くて仕方ない。
「さ、お召しものを」
女の一人が捧げた箱には、白い衣が見える。
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