6 / 150
凌辱の宴 二
しおりを挟む
さらに極めつけは、四人の男たちが板に乗せて引いてきた小型木馬だった。
アベルはあまりの衝撃に身体が震えてきた。
(な、なんという……。これは、なんということだ!)
醜悪なことに、木馬の背には、やはり淫靡な道具が備え付けられてある。
もはやアベルは我慢できなかった。
アベルは、まだ女性を知らなかった。
夜の営みとは、男女の愛の行為とは、もっと神聖で清らかなものだと想像していたのだ。
知識としては知っていても、肉体で味わったことのない未知の行為に憧れを持っていたのだ。ほのかな理想に泥をかけられた気分だ。
汚れを知らぬ青年の純情さが、いっそうこの冒涜的な異国の宴に嫌悪感を起こさせる。
「どうだ、気に入ったか、伯爵? これはすべて今宵の花嫁であるそなたへの贈り物だぞ。ゆっくりと楽しもう」
笑いながらそんなことを言うディオ王への憎悪と軽蔑にアベルは全身が燃えたった。
「この鈴など、なかなか楽しいぞ」
そう言って銀の皿にある金の鈴を手に取った王は、それを二つ弄びながら、アベルの前で振ってみせる。どっ、と客たちが身をよじって笑う。
「陛下、最後の贈り物でございます」
ハルムの声が響きわたる。
「第一側室、アイーシャ様からの贈り物でございます」
数人の奴隷宦官たちが運んできたのは――。
大き目の寝台であった。上には純白の絹布が敷かれてある。
「今宵の花嫁花婿への最後の贈り物でございます」
拍手が広間じゅうに響きわたる。
(馬鹿馬鹿しい……! なんと馬鹿げた)
唯一の救いはこれで終わりということだ。
アベルは一刻も早くここから立ち去って、休みたい。旅の疲れでくたくたなのだ。
「では、陛下、私はこれで」
これ以上ここにいると腹立ちでなにを言ってしまうかわからず、アベルは非礼とは知りつつも辞去の挨拶を述べようとした。
「失礼ですが、疲れておりますので、これで失礼させていただきます」
ディオ王は黒い眉を丸めた。
「そうか。疲れておるのか。では、すぐそこに横になるがよい」
「……あの、」
「安心しろ。こういうときのために精が出る薬も贈り物のなかにはあった。さっそく使うとするか」
「あの、陛下」
しん――と、広間は先ほどまでの馬鹿騒ぎが嘘のように静まりかえっている。
どこか皆、獲物が罠にはまるのを固唾を飲んで待っているようだ。
「花嫁よ、そこへ横になると良い」
「あ、あの、ディオ陛下?」
精悍な顔が悪戯っ子のようにゆがむ。ディオ王はあっさりと言ってのけた。
「さぁ、今宵は余とそなたの初夜だ。皆、待っておるぞ。衣を脱いで褥に横たわるがよい」
アベルは数秒、開けた口を閉じることができなかった。
アベルはあまりの衝撃に身体が震えてきた。
(な、なんという……。これは、なんということだ!)
醜悪なことに、木馬の背には、やはり淫靡な道具が備え付けられてある。
もはやアベルは我慢できなかった。
アベルは、まだ女性を知らなかった。
夜の営みとは、男女の愛の行為とは、もっと神聖で清らかなものだと想像していたのだ。
知識としては知っていても、肉体で味わったことのない未知の行為に憧れを持っていたのだ。ほのかな理想に泥をかけられた気分だ。
汚れを知らぬ青年の純情さが、いっそうこの冒涜的な異国の宴に嫌悪感を起こさせる。
「どうだ、気に入ったか、伯爵? これはすべて今宵の花嫁であるそなたへの贈り物だぞ。ゆっくりと楽しもう」
笑いながらそんなことを言うディオ王への憎悪と軽蔑にアベルは全身が燃えたった。
「この鈴など、なかなか楽しいぞ」
そう言って銀の皿にある金の鈴を手に取った王は、それを二つ弄びながら、アベルの前で振ってみせる。どっ、と客たちが身をよじって笑う。
「陛下、最後の贈り物でございます」
ハルムの声が響きわたる。
「第一側室、アイーシャ様からの贈り物でございます」
数人の奴隷宦官たちが運んできたのは――。
大き目の寝台であった。上には純白の絹布が敷かれてある。
「今宵の花嫁花婿への最後の贈り物でございます」
拍手が広間じゅうに響きわたる。
(馬鹿馬鹿しい……! なんと馬鹿げた)
唯一の救いはこれで終わりということだ。
アベルは一刻も早くここから立ち去って、休みたい。旅の疲れでくたくたなのだ。
「では、陛下、私はこれで」
これ以上ここにいると腹立ちでなにを言ってしまうかわからず、アベルは非礼とは知りつつも辞去の挨拶を述べようとした。
「失礼ですが、疲れておりますので、これで失礼させていただきます」
ディオ王は黒い眉を丸めた。
「そうか。疲れておるのか。では、すぐそこに横になるがよい」
「……あの、」
「安心しろ。こういうときのために精が出る薬も贈り物のなかにはあった。さっそく使うとするか」
「あの、陛下」
しん――と、広間は先ほどまでの馬鹿騒ぎが嘘のように静まりかえっている。
どこか皆、獲物が罠にはまるのを固唾を飲んで待っているようだ。
「花嫁よ、そこへ横になると良い」
「あ、あの、ディオ陛下?」
精悍な顔が悪戯っ子のようにゆがむ。ディオ王はあっさりと言ってのけた。
「さぁ、今宵は余とそなたの初夜だ。皆、待っておるぞ。衣を脱いで褥に横たわるがよい」
アベルは数秒、開けた口を閉じることができなかった。
1
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説


青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。



イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる