煉獄の歌 

文月 沙織

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「や、やめろ!」
 おぞましいことを大声で言われ、敬は血が凍りつきそうになった。辺りに響く新たな失笑も敬の神経を逆なでし、恥辱の痛みを大きくする。
 傲慢なほどに気強い敬だが、その一方で身体と心はひどくじやすいことを、敬本人は自覚していない。
 当人も自覚していないその繊細で高雅こうがな感性は、男たちのいたぶりに慣れることなど許すわけもなく、ひとつひとつの責めの言葉や、視線、感触に人一倍敏感に応じてしまうのだ。
 そして――、敬を徹底的に打ちのめしたのは、信じられないことだが宇田の指戯によって、秘めていた、敬自身も気づくことのなかった官能を探り当てられてしまったことだ。
「あっ、ああ!」
 仰向けで上半身を後ろから羽交い絞めにされて胸をまさぐられているこの状況では、身体の反応を隠すことがまったくできない。
 さらに、敬の抵抗を完封するために、黒服二人が左右から敬の両脚を抑え込んでしまっている。
 無残きわまりないのは、蕾に含まされた〟尻尾〟であり、それがもたらす圧倒的な印象が、敬をほとんど人では無くしていた。
 もし、鏡でもあり、今の自分の様子を敬が見ることができたら、おそらく突発的に舌を噛んでいたかもしれない。舌を噛むことがなくとも、まちがいなく発狂していたろう。
「カメラに撮っておきたいな」
 客の誰かが残念そうに呟くのに、司会者の男がやんわり声をかけた。
「申し訳ありませんが、写真機の持ち込みはは当方の規則で固くお断りしておりますので」
 万が一にも客の誰かが写真に入ることを慮って、この秘密クラブでは入会のときの規則としてカメラや映像器具の持ち込みをいっさい禁止している。
「どうか、皆様、この瞬間のワンちゃんの姿をご存分にお楽しみください」
 そんな司会者の勝手な言い分は、幸い意識が朦朧としている敬の耳に入らない。
 敬は文字通りまな板の上の鯉だった。
 その状況で、あますところなく、十九の肉体の持つ熱を発散させつづけられたのだ。
「はっ、ああ! ああ、も、もう、はなせ!」
「おお、いくか? いきそうか?」
 敬の反応が面白いのか、図に乗ったように宇田の声音もはずんでくる。
 周囲の男たちは身を乗り出すようにして敬の醜態を楽しんでいる。
「綺麗な色だな。胸も下も」
「やっぱり、若いねぇ」
 そんな声が低く囁かれる。
「ほうら、坊や、遂ってごらん。今日は、おっぱいだけで頑張ろうね。ほれ、」
「や……! いやだ!」
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