煉獄の歌 

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
84 / 181

売られる者 一

しおりを挟む
「四つん這いになって、脚を広げろ」
 瀬津は憎らしいほど尊大に命じる。
 敬は屈辱と怒りに頬を燃やしながら、逃げることもできず従った。
「ああ、襦袢はそのままでいい。その方が色っぽいからな」
 着替えたばかりの襦袢の帯紐にかけていた手を外し、渋々と言わるままにする。
 畳の上に手をつき、もうしわけ程度に脚をひらくと、瀬津によって乱暴な仕草で大きく広げられる。裾がまくりあげられ、臀部があらわになるのがわかる。
 畳の上で握りしめた拳がふるえる。
「ふん……。こっちはけっこう開発したから悪くないはずだが。……少し赤く腫れてるな」
 自分の背が石のように固くなるのがわかる。額にうっすら屈辱の汗が浮く。
 敬は怒声をあげて、瀬津の手を振りはらいたいのをこらえ、声を荒らげるかわりに必死に考えてみる。
 照葉が言うようにここをどうにかして逃げだすか……。それとも、小虎のように、いっそ開きなって金持ちの客をさがすか。
 敬が中学生の頃、組の若衆から聞いた話がある。
 やはりヤクザの娘で親を殺された女がいた。
 彼女は後にホステス――当時はまだ女給と呼ばれていたが――になり、数人の上客をつかみ、その男たちを使って親の仇の相手を破産させ、家族もろとも追い詰め、最後には自殺に見せかけて事故を起こさせ死にいたらしめたという。ヤクザ社会で流れた噂であるが、かなり信憑性がある。
(いっそ……)
 敬は恥辱に悶えながら、必死に考える。
(俺も金持ちのパトロンでも捕まえてやろうか)
 そうして、この男に……、今敬を我が物にし、いいようにもてあそんでいるこの男に復讐してやるのはどうだろう? そんなことを考えてしまう。
 ふっ……、と鼻で笑うような声が聞こえた。
「何を考えている?」
「……べつに、なにも……」 
 ぎょっとしたが、なるべくあっさりと返した。だが、次の瞬間、中心を強く握りしめられ、敬は呻いた。
 くっ、くっ、くっ……。
 背後で瀬津が笑う。
「おまえの考えていることなど、まるわかりだぞ。おまえ、いつか俺に復讐してやろう、と思っているだろう? それこそ、若瀬わかせのお嬢のように」
 瀬津の洞察力の鋭さに、ぎょっとした。
 若瀬。たしかそういった名前だったことを敬は思い出す。
「まぁ、それもありかもな。自殺したり、逃亡するよりかは、いっそそれぐらいの気構えで、せいぜい男に尻を振ってみろ。ほら、」
「うっ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

学校の脇の図書館

理科準備室
BL
図書係で本の好きな男の子の「ぼく」が授業中、学級文庫の本を貸し出している最中にうんこがしたくなります。でも学校でうんこするとからかわれるのが怖くて必死に我慢します。それで何とか終わりの会までは我慢できましたが、もう家までは我慢できそうもありません。そこで思いついたのは学校脇にある市立図書館でうんこすることでした。でも、学校と違って市立図書館には中高生のおにいさん・おねえさんやおじいさんなどいろいろな人が・・・・。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。

君を独占したい。

檮木 蓮
BL
性奴隷として売られたユト 売られる前は、平凡な日を送っていたが 父の倒産をきっかけに人生が 変わった。 そんな、ユトを買ったのは…。

女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男

湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。 何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。

支配された捜査員達はステージの上で恥辱ショーの開始を告げる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ぼくに毛が生えた

理科準備室
BL
昭和の小学生の男の子の「ぼく」はクラスで一番背が高くて5年生になったとたんに第二次性徴としてちんちんに毛が生えたり声変わりしたりと身体にいろいろな変化がおきます。それでクラスの子たちにからかわれてがっかりした「ぼく」は学校で偶然一年生の男の子がうんこしているのを目撃し、ちょっとアブノーマルな世界の性に目覚めます。

三限目の国語

理科準備室
BL
昭和の4年生の男の子の「ぼく」は学校で授業中にうんこしたくなります。学校の授業中にこれまで入学以来これまで無事に家までガマンできたのですが、今回ばかりはまだ4限目の国語の授業で、給食もあるのでもう家までガマンできそうもなく、「ぼく」は授業をこっそり抜け出して初めての学校のトイレでうんこすることを決意します。でも初めての学校でのうんこは不安がいっぱい・・・それを一つ一つ乗り越えていてうんこするまでの姿を描いていきます。「けしごむ」さんからいただいたイラスト入り。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

処理中です...