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売られる者 一
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「四つん這いになって、脚を広げろ」
瀬津は憎らしいほど尊大に命じる。
敬は屈辱と怒りに頬を燃やしながら、逃げることもできず従った。
「ああ、襦袢はそのままでいい。その方が色っぽいからな」
着替えたばかりの襦袢の帯紐にかけていた手を外し、渋々と言わるままにする。
畳の上に手をつき、もうしわけ程度に脚をひらくと、瀬津によって乱暴な仕草で大きく広げられる。裾がまくりあげられ、臀部があらわになるのがわかる。
畳の上で握りしめた拳がふるえる。
「ふん……。こっちはけっこう開発したから悪くないはずだが。……少し赤く腫れてるな」
自分の背が石のように固くなるのがわかる。額にうっすら屈辱の汗が浮く。
敬は怒声をあげて、瀬津の手を振りはらいたいのをこらえ、声を荒らげるかわりに必死に考えてみる。
照葉が言うようにここをどうにかして逃げだすか……。それとも、小虎のように、いっそ開きなって金持ちの客をさがすか。
敬が中学生の頃、組の若衆から聞いた話がある。
やはりヤクザの娘で親を殺された女がいた。
彼女は後にホステス――当時はまだ女給と呼ばれていたが――になり、数人の上客をつかみ、その男たちを使って親の仇の相手を破産させ、家族もろとも追い詰め、最後には自殺に見せかけて事故を起こさせ死にいたらしめたという。ヤクザ社会で流れた噂であるが、かなり信憑性がある。
(いっそ……)
敬は恥辱に悶えながら、必死に考える。
(俺も金持ちのパトロンでも捕まえてやろうか)
そうして、この男に……、今敬を我が物にし、いいように弄んでいるこの男に復讐してやるのはどうだろう? そんなことを考えてしまう。
ふっ……、と鼻で笑うような声が聞こえた。
「何を考えている?」
「……べつに、なにも……」
ぎょっとしたが、なるべくあっさりと返した。だが、次の瞬間、中心を強く握りしめられ、敬は呻いた。
くっ、くっ、くっ……。
背後で瀬津が笑う。
「おまえの考えていることなど、まるわかりだぞ。おまえ、いつか俺に復讐してやろう、と思っているだろう? それこそ、若瀬のお嬢のように」
瀬津の洞察力の鋭さに、ぎょっとした。
若瀬。たしかそういった名前だったことを敬は思い出す。
「まぁ、それもありかもな。自殺したり、逃亡するよりかは、いっそそれぐらいの気構えで、せいぜい男に尻を振ってみろ。ほら、」
「うっ!」
瀬津は憎らしいほど尊大に命じる。
敬は屈辱と怒りに頬を燃やしながら、逃げることもできず従った。
「ああ、襦袢はそのままでいい。その方が色っぽいからな」
着替えたばかりの襦袢の帯紐にかけていた手を外し、渋々と言わるままにする。
畳の上に手をつき、もうしわけ程度に脚をひらくと、瀬津によって乱暴な仕草で大きく広げられる。裾がまくりあげられ、臀部があらわになるのがわかる。
畳の上で握りしめた拳がふるえる。
「ふん……。こっちはけっこう開発したから悪くないはずだが。……少し赤く腫れてるな」
自分の背が石のように固くなるのがわかる。額にうっすら屈辱の汗が浮く。
敬は怒声をあげて、瀬津の手を振りはらいたいのをこらえ、声を荒らげるかわりに必死に考えてみる。
照葉が言うようにここをどうにかして逃げだすか……。それとも、小虎のように、いっそ開きなって金持ちの客をさがすか。
敬が中学生の頃、組の若衆から聞いた話がある。
やはりヤクザの娘で親を殺された女がいた。
彼女は後にホステス――当時はまだ女給と呼ばれていたが――になり、数人の上客をつかみ、その男たちを使って親の仇の相手を破産させ、家族もろとも追い詰め、最後には自殺に見せかけて事故を起こさせ死にいたらしめたという。ヤクザ社会で流れた噂であるが、かなり信憑性がある。
(いっそ……)
敬は恥辱に悶えながら、必死に考える。
(俺も金持ちのパトロンでも捕まえてやろうか)
そうして、この男に……、今敬を我が物にし、いいように弄んでいるこの男に復讐してやるのはどうだろう? そんなことを考えてしまう。
ふっ……、と鼻で笑うような声が聞こえた。
「何を考えている?」
「……べつに、なにも……」
ぎょっとしたが、なるべくあっさりと返した。だが、次の瞬間、中心を強く握りしめられ、敬は呻いた。
くっ、くっ、くっ……。
背後で瀬津が笑う。
「おまえの考えていることなど、まるわかりだぞ。おまえ、いつか俺に復讐してやろう、と思っているだろう? それこそ、若瀬のお嬢のように」
瀬津の洞察力の鋭さに、ぎょっとした。
若瀬。たしかそういった名前だったことを敬は思い出す。
「まぁ、それもありかもな。自殺したり、逃亡するよりかは、いっそそれぐらいの気構えで、せいぜい男に尻を振ってみろ。ほら、」
「うっ!」
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