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七
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先ほどの照葉のように、ずかずかと割って入ってきたのは、十五、六ぐらいの少年だった。
彼もまた襦袢を纏っているところからして、敬とおなじ立場のようだ。
顎のあたりで切りそろえられた黒髪が、彼を少女のように見せている。白い肌に、吊り上がった目は、時代劇に出てくる凛々しいお小姓のようだ。
「あんた、この辺りのヤクザの家の息子なんやろ? けっこう大きい組やて聞いたけれど」
敬は答えなかった。男娼の身に墜ちた今、組の名前は出したくない。
「ふーん」
相手は値踏みするような目で敬を見る。あきらかに年下の少年の尊大な態度に敬は腹が立ったが、無視した。
「偉そうな顔するなよ。言っとくけど、俺かてヤクザの組長の子やで。大磯組言うてな、関西ではちっとは名の知れた家やで」
「それが潰れて売られたんでしょ。なによ、こんな所でいばったってしょうがないじゃない」
小虎と呼ばれた彼は、切れ長の目で照葉を睨みつけた。
その表情は、はっきり言って照葉たちよりも美しい、と言える。
見た目は癇性な美少女そのものだが、声は変声期をむかえて間もないようで、かすれて響くのだが、それがまた彼の気の強そうな表情に一抹の哀感をあたえて、見る者の心をゆさぶる。敬は相手のふてぶてしい態度にもかかわらわず、いや、ふてぶてしいからこそか、奇妙な同情心を持ってしまった。
「うるせぇな。借金ぐらい、俺がここで売れっ子になって幾らでも返してやるわ! 言っとくけどな、店が始まったら、俺は絶対おまえらより稼いでやるぞ」
どうやら、小虎と言う源氏名を持つ彼は、身を売ることに抵抗はないようだ。事情もあるのだろうが、敬は一瞬彼に感じた同情心が消えていくのを感じた。
「あんた、わかってるの? オカマにされるのよ?」
呆れたような顔で言う照葉に、小虎は、先ほど照葉が姉にしたように、小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「ふん、それぐらいどうということないわ。金持ちのヒヒ爺をたらしこんで、この屋敷から脱け出したるんや。そして、もう一回組を立ち上げて、俺はかならず親父を殺した奴に復讐してやる」
「おまえの父親、殺されたのか?」
敬はびっくりして訊いていた。ヤクザの組用の息子で、父親を殺されて男娼に堕とされたという境遇は、今の自分とまったく同じだ。
小虎は美しい双眼に憎悪の火花を散らして、敬を睨みつけてきた。
彼もまた襦袢を纏っているところからして、敬とおなじ立場のようだ。
顎のあたりで切りそろえられた黒髪が、彼を少女のように見せている。白い肌に、吊り上がった目は、時代劇に出てくる凛々しいお小姓のようだ。
「あんた、この辺りのヤクザの家の息子なんやろ? けっこう大きい組やて聞いたけれど」
敬は答えなかった。男娼の身に墜ちた今、組の名前は出したくない。
「ふーん」
相手は値踏みするような目で敬を見る。あきらかに年下の少年の尊大な態度に敬は腹が立ったが、無視した。
「偉そうな顔するなよ。言っとくけど、俺かてヤクザの組長の子やで。大磯組言うてな、関西ではちっとは名の知れた家やで」
「それが潰れて売られたんでしょ。なによ、こんな所でいばったってしょうがないじゃない」
小虎と呼ばれた彼は、切れ長の目で照葉を睨みつけた。
その表情は、はっきり言って照葉たちよりも美しい、と言える。
見た目は癇性な美少女そのものだが、声は変声期をむかえて間もないようで、かすれて響くのだが、それがまた彼の気の強そうな表情に一抹の哀感をあたえて、見る者の心をゆさぶる。敬は相手のふてぶてしい態度にもかかわらわず、いや、ふてぶてしいからこそか、奇妙な同情心を持ってしまった。
「うるせぇな。借金ぐらい、俺がここで売れっ子になって幾らでも返してやるわ! 言っとくけどな、店が始まったら、俺は絶対おまえらより稼いでやるぞ」
どうやら、小虎と言う源氏名を持つ彼は、身を売ることに抵抗はないようだ。事情もあるのだろうが、敬は一瞬彼に感じた同情心が消えていくのを感じた。
「あんた、わかってるの? オカマにされるのよ?」
呆れたような顔で言う照葉に、小虎は、先ほど照葉が姉にしたように、小馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「ふん、それぐらいどうということないわ。金持ちのヒヒ爺をたらしこんで、この屋敷から脱け出したるんや。そして、もう一回組を立ち上げて、俺はかならず親父を殺した奴に復讐してやる」
「おまえの父親、殺されたのか?」
敬はびっくりして訊いていた。ヤクザの組用の息子で、父親を殺されて男娼に堕とされたという境遇は、今の自分とまったく同じだ。
小虎は美しい双眼に憎悪の火花を散らして、敬を睨みつけてきた。
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