煉獄の歌

九

　敬は目にありったけの力を込めて相手を睨みつけていた。
「下種の変態野郎！　おまえみたいなのが若頭なら、木藤組ももう終わりだな！　けっ、意味のないごたくばかり吐きやがって！　そんな道具を使わないと、俺をやれないのかよ？」
　さすがに瀬津は眉をひそめたが、すぐにその双眼には面白がるように光がはじける。
「ほう……。たいした坊主だ。この状況で俺に喧嘩を売るとはな」
「はうっ！」
　身体の中心を強く握りしめられ、敬は戒められたままのけぞる。手足への圧力感が増す。
「お行儀悪い口をきいた罰を与えないとな」
「ひっ！」
　刹那せつな、敬を苦しめていた下肢の圧迫感が消えた。
　物音が聞こえ、体内に埋めこまれていた道具が床に放り投げられたのが知れる。
「はぁ……」
　ほんの一瞬の安堵あんど。
　だが、そんな敬を嘲笑あざわらうように、次の武器が敬の内側へ侵入してきた。
「うう！」
　うごめいているのは、瀬津の指だ。
　道具とちがって柔らかみと、血肉を感じさせるその感触は、道具にくらべて小さくはあっても、くらべようのないもどかしさを敬に与える。
「ううっ、ううっ、ううっ！」
　前の紐はほどかれることなく、敬は苦しさに悶絶した。