煉獄の歌 

文月 沙織

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 だが、聞こえてきた足音に、あわてて涙をこらえる。
 襖の開く音とともに、揶揄の声が降ってきた。
「どうだ? 玩具おもちゃは気に入ったか?」
(くっ……)
 男は背広は脱いでおり、ネクタイもしていない。つい先ほどまでくつろいでいたらしく、くだけた格好だ。
 ずかずかと入ってくると、敬のすぐ側で胡坐あぐらをかき、さも面白そうな顔で敬の苦悶を観察している。
「おや、もう漏らしているのか?」
「あっ、よせ!」
 男の手が伸びてきて、敬の中心を襦袢の布ごしにまさぐる。
「いいな、その様は。いかにも、さらわれた姫君というふうだな」
 緋色の襦袢姿を揶揄やゆしているのだろう。敬は恥辱に唇を噛む。
「へ、変態野郎!」
 言った刹那せつな、敬は身をよじりそうになった。
「うう……」
 瀬津が布越しにてのひらに力を込めたのだ。
 敬の苦痛にゆがむ顔を堪能しながら、瀬津は襦袢の前をあらわにする。
 敬は次々と与えられる責めに、ただひたすら目を閉じて、耐えるしかない。
「ちょっとは我慢することも覚えないとな」
 その声にかすかに目を開けた敬に向かって、これみよがしにズボンの尻ポケットから取り出した物を見せた。
 濃紫……小紫色の紐。
 和装に使われる優美な道具をふりかざすと、あおむけにされている敬からは見えないが、敬の雄の象徴の根本をそれで、やんわりと縛ってしまう。
「はぅ……!」
 紐の感触に敬は首を横に振った。
「生意気な態度の罰として、しばらくはおあずけだ」
 言いながら、先端を親指と人差し指でつまみあげ、ぐりぐり、と揉んできた。
「ひぃ――」
 瀬津の愉快そうな笑い声が暗い部屋に響く。

 はぁっ……! ああっ……! ああっ……! も、もう……。
 そんな、信じられないほど淫らな喘ぎ声が薄闇に響く。
 自分がこんなみっともない声をあげていることが信じられず、敬は五体を燃やしながら、ひたすら苦しみに耐えていた。
 襦袢はすでに汗でびっしょりと湿っている。さらに、下肢のあたりは、だらだらとこぼした淫らな滴りで無残なことになっている。小紫の紐も敬の堪えきれなかった粗相のせいで、色を変えている。
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