煉獄の歌 

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
71 / 181

しおりを挟む
 だが、聞こえてきた足音に、あわてて涙をこらえる。
 襖の開く音とともに、揶揄の声が降ってきた。
「どうだ? 玩具おもちゃは気に入ったか?」
(くっ……)
 男は背広は脱いでおり、ネクタイもしていない。つい先ほどまでくつろいでいたらしく、くだけた格好だ。
 ずかずかと入ってくると、敬のすぐ側で胡坐あぐらをかき、さも面白そうな顔で敬の苦悶を観察している。
「おや、もう漏らしているのか?」
「あっ、よせ!」
 男の手が伸びてきて、敬の中心を襦袢の布ごしにまさぐる。
「いいな、その様は。いかにも、さらわれた姫君というふうだな」
 緋色の襦袢姿を揶揄やゆしているのだろう。敬は恥辱に唇を噛む。
「へ、変態野郎!」
 言った刹那せつな、敬は身をよじりそうになった。
「うう……」
 瀬津が布越しにてのひらに力を込めたのだ。
 敬の苦痛にゆがむ顔を堪能しながら、瀬津は襦袢の前をあらわにする。
 敬は次々と与えられる責めに、ただひたすら目を閉じて、耐えるしかない。
「ちょっとは我慢することも覚えないとな」
 その声にかすかに目を開けた敬に向かって、これみよがしにズボンの尻ポケットから取り出した物を見せた。
 濃紫……小紫色の紐。
 和装に使われる優美な道具をふりかざすと、あおむけにされている敬からは見えないが、敬の雄の象徴の根本をそれで、やんわりと縛ってしまう。
「はぅ……!」
 紐の感触に敬は首を横に振った。
「生意気な態度の罰として、しばらくはおあずけだ」
 言いながら、先端を親指と人差し指でつまみあげ、ぐりぐり、と揉んできた。
「ひぃ――」
 瀬津の愉快そうな笑い声が暗い部屋に響く。

 はぁっ……! ああっ……! ああっ……! も、もう……。
 そんな、信じられないほど淫らな喘ぎ声が薄闇に響く。
 自分がこんなみっともない声をあげていることが信じられず、敬は五体を燃やしながら、ひたすら苦しみに耐えていた。
 襦袢はすでに汗でびっしょりと湿っている。さらに、下肢のあたりは、だらだらとこぼした淫らな滴りで無残なことになっている。小紫の紐も敬の堪えきれなかった粗相のせいで、色を変えている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...