煉獄の歌

五

　唇を開き、あえぐように背を震わせ、快感を表現している。　
　うっとりと、陶酔の面おももちを浮かべ、膝立ちの身体を揺らしている。
　しばし、銀面の向こうの敬も、暗室の瀬津たちも息を詰めて、敬を翻弄していた欲望の波が引くのを待ってみた。
　ぼんやりとした様子の敬が、ようやく我に帰ってきたとき、真っ先に目に入ったのは、淫らな粗相の名残のようだ。
　いたたまれなさそうに顔を伏せる姿は、先ほどの淫猥きわまりない動作からは想像できないほど、可憐で、つつましやかだ。
　戦後、世のなかが様変さまがわりするにつれ、今時の少女たちが失くしつつある純潔と清純さを備えた敬が、瀬津はつくづく可愛く思えてきた。
（いやいや、可愛い、などと思ってはいけないんだろうがな）
　ぶれてしまう己を瀬津は内心で叱咤した。
　目的を忘れはいけない。さらに己に命じてみる。
　安賀敬をとことん凌辱し、貶おとしめ、根っからの男娼につくり変える。そういう目的が瀬津にはある。
（あの清廉さを踏みにじり、本物の淫乱に仕込んでやる。自分から尻を振って男の前に足を開くようにしてやる。そのとき、俺の復讐は終わる）　
　粗相をして、辛そうに恥じ入っている敬の姿を見ながら、瀬津は舌なめずりした。
「さて、行くとするか」
　どうやって敬をいたぶるか。粗相の跡を指差し、笑ってやろう。悔しげな敬の顔を想像するだけで、胸がわくわくする。