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五
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敬は屈辱と怒りに色白の頬を燃やしたが、相手はまったく動じることもなく、早くしろとせかす。
「こう見えても私も忙しい身なんです。早くしてください」
「冗談じゃない! 俺は男娼なんて絶対御免だからな!」
「おまえが嫌だろうが、なんだろうが、もう決まったことなんだよ。往生際が悪いぞ。ほら、脱げ」
瀬津が敬のシャツを引き剥ごうとする。
「触るな!」
言った刹那、敬の身体は畳の上にふっとんだ。
横つっらを力まかせにはつられたのだ。
咄嗟のことでよけきれず、敬は不様に畳の上でもがくことになった。
「ち、畜生!」
悔しさに頭が破裂しそうだ。
「若頭、顔に傷をつけては……」
陸奥の声が頭上で響くが、敬の視界は怒りで真っ赤に染まり、何も見えない。
「まったく理解の悪い餓鬼だな。いいか、おまえはもう安賀の坊ちゃんでも不良仲間の頭でもなく、この『龍風城』の男娼なんだ。これからみっちりと修行して、稼いでもらうことになるからな。陸奥、脱がせろ」
無言で陸奥は倒れている敬を引きずりあげると、シャツを奪おうとする。
「い、いやだ、やめろ! やめろって!」
気に入りのアイビールックのズボンを下ろされかけ、敬は死にもの狂いになって抗ったが、いくら敬が喧嘩慣れしていても本職のヤクザの前では大人と子どもほどに力がちがい、しかも控えていた大林まで加勢に入ってくる。
両腕を陸奥にとらわれ、下肢は大林によって剥ぎとられていく。あまりの惨めさ、悔しさに敬の誇りたかい魂は震えた。
「やめろ! やめろって!」
殺されかけた小動物のように、不自由な体勢でも無我夢中になって足を振りまわす。それが大林の頬に当たり、彼の代わりに瀬津が濃い眉をひそめた。
「おい、あの連れてきた餓鬼はどこにいる?」
「あの嶋とかいう小僧ですか? 今、とりあえず厨房の大将に預けていますが」
「あいつを連れてこい。手のかかる主の世話をしてもらおう」
「なっ、なんで嶋を巻き込むんだよ!」
敬を睨みつける瀬津の顔は酷薄そのものだ。
「おまえが聞き分け悪いからだろう。こうなったら、子分に脱がしてもらえ」
「くっ……!」
「あの小僧もここで働くなら、この仕事と俺のやり方を知ってもらわないとな。これからは、お前の世話係として、ここで一緒に調教を手伝ってもらうとするか」
敬は屈辱に胸をつまらせ、こみあげてくる涙を必死にこらえた。
「畜生、この下種野郎!」
吼えたてながらも、どうする術もなく、手足から力を抜くしかない。抵抗を止めたのを悟って、瀬津が身を引き、大林もならう。
「こう見えても私も忙しい身なんです。早くしてください」
「冗談じゃない! 俺は男娼なんて絶対御免だからな!」
「おまえが嫌だろうが、なんだろうが、もう決まったことなんだよ。往生際が悪いぞ。ほら、脱げ」
瀬津が敬のシャツを引き剥ごうとする。
「触るな!」
言った刹那、敬の身体は畳の上にふっとんだ。
横つっらを力まかせにはつられたのだ。
咄嗟のことでよけきれず、敬は不様に畳の上でもがくことになった。
「ち、畜生!」
悔しさに頭が破裂しそうだ。
「若頭、顔に傷をつけては……」
陸奥の声が頭上で響くが、敬の視界は怒りで真っ赤に染まり、何も見えない。
「まったく理解の悪い餓鬼だな。いいか、おまえはもう安賀の坊ちゃんでも不良仲間の頭でもなく、この『龍風城』の男娼なんだ。これからみっちりと修行して、稼いでもらうことになるからな。陸奥、脱がせろ」
無言で陸奥は倒れている敬を引きずりあげると、シャツを奪おうとする。
「い、いやだ、やめろ! やめろって!」
気に入りのアイビールックのズボンを下ろされかけ、敬は死にもの狂いになって抗ったが、いくら敬が喧嘩慣れしていても本職のヤクザの前では大人と子どもほどに力がちがい、しかも控えていた大林まで加勢に入ってくる。
両腕を陸奥にとらわれ、下肢は大林によって剥ぎとられていく。あまりの惨めさ、悔しさに敬の誇りたかい魂は震えた。
「やめろ! やめろって!」
殺されかけた小動物のように、不自由な体勢でも無我夢中になって足を振りまわす。それが大林の頬に当たり、彼の代わりに瀬津が濃い眉をひそめた。
「おい、あの連れてきた餓鬼はどこにいる?」
「あの嶋とかいう小僧ですか? 今、とりあえず厨房の大将に預けていますが」
「あいつを連れてこい。手のかかる主の世話をしてもらおう」
「なっ、なんで嶋を巻き込むんだよ!」
敬を睨みつける瀬津の顔は酷薄そのものだ。
「おまえが聞き分け悪いからだろう。こうなったら、子分に脱がしてもらえ」
「くっ……!」
「あの小僧もここで働くなら、この仕事と俺のやり方を知ってもらわないとな。これからは、お前の世話係として、ここで一緒に調教を手伝ってもらうとするか」
敬は屈辱に胸をつまらせ、こみあげてくる涙を必死にこらえた。
「畜生、この下種野郎!」
吼えたてながらも、どうする術もなく、手足から力を抜くしかない。抵抗を止めたのを悟って、瀬津が身を引き、大林もならう。
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