煉獄の歌 

文月 沙織

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「い、いやだ! いや!」
 死にものぐるいの敬の抵抗を、腕一本で封じこみ、瀬津はやすやすと上半身も裸に剝いていく。
「よせ、こ、殺す! 絶対、おまえ殺す!」
「ぼ、坊ちゃん……!」
 嶋の声もほとんど泣き声になっていた。
「若頭、ほどほどに」
 陸奥と呼ばれた男が、やれやれ、というふうに首を振る。
「安心しろ。手荒いことはしない」
「や、やめて下さい!」
 捨て身の覚悟で瀬津に殴りかかろうとした嶋は、陸奥の手で止められてしまう。
「落ち着け。若頭が言うからには、たしかに手荒なことはしないはずだ」
「と、止めてください。お願いします!」
 嶋は、救いをもとめるように、陸奥にすがった。
「おまえの坊ちゃんは、この店で若頭に唾吐いたんだぞ。それ相応の償いはしないといけない。指を詰められるよりはマシだろう」
 二人がそんなやりとりをしている間に、敬はほとんど全裸にされてしまっていた。靴下だけは相変わらずそのままなのが、しからんほどにいやらしい。
 それでも、ふたたびうつ伏せの姿勢になったことで、ほんのかすかな安堵が敬の引きちぎられそうな神経を一瞬なだめてくれた。
 もう一人の舎弟の男は、敬のあられもない姿を、涎を垂らさんばかりに、目をぎらつかせて食い入るように見ている。角刈りにしている陸奥とは対照的に、前髪を垂らしており、当節のヤクザ者の風体にしても、やや異色だ。「安賀の坊やが、すごい格好だな。なぁ、このまま写真に撮ったら高く売れるぜ」
「岩田」
 呆れたように名を呼ぶ陸奥。外野の反応に気づいた瀬津がほくそ笑んだ。
「写真か。それはいいな。記念に一枚、撮っておくか、坊や? この可愛い格好を。え?」
 そこで瀬津はまた、パシン、と尻を打つ音を響かせる。
「ちくしょ……う」
 敬は舌を噛むことのできない己の弱さを呪いながら、畳に爪をたてた。
 今、敬は膝立ちにされ、背後から瀬津の左手によって左胸を女のようにまさぐらていた。
 瀬津の右手の指は敬の蕾をいじっているようだ。胸の突起と背後の蕾を同時に刺激され、敬の白い肉体は、寒さも忘れて全身を桜色に焦がし、瞋恚と羞恥を訴えて燃えた。
「畜生! へ、変態の、ど助平野郎!」
 敬は白い頬を赤く燃やして、不自由な体勢で必死に瀬津を睨みつけたが、それはますます男たちの欲望を煽るだけだった。
「まったく懲りない餓鬼だ。この程度の躾じゃ、まだ手ぬるいようだな」
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