黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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最後の夢 十二

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「あくまでも、芸術的、文化的なものとして、興味があるんです」
 アルベルトは頬をほのかに赤く染めて、恥じらうように言う。
「あ、いや、訊き方が悪かったね。変な意味で言っているんじゃないよ」
 変な意味で言っているのだ。
 だが、ルイスはあふれる狩猟本能をおしかくし、紳士的な態度はくずさないようにした。文化人の端くれではあるが、仕事や私生活では情熱的で貪婪な自分を自覚している。
「良かったら、すこし話さないかな? 私はこういう者だが」
 名刺を差し出すと、アルベルトは興味を示した。
「脚本家なんですね……」
「ここはもうすぐ閉まるようだ。この近くに良いカフェを知っているんだ。続きはそこで話そう
「え、ええ……。でも、」
「君、仕事をさがすつもりだろう? 君にとっても悪い話ではないよ。力になれるかもしれない」
 アルベルトは少し迷った顔になったが、ルイスの仕事や言葉に興味を引かれたようだ。
「少しだけなら」
 ルイスとアルベルトはつれだって、廊下へと向かった。
 やがて、閉館のアナウンスが響き、照明が消えていく。

 
 ガラスケースのなか、羊皮紙に描かれた、木馬にまたがり喘ぐ美青年の顔は、苦痛と悦楽を同時にあらわしていた。
 アベル=アルベニス伯爵は、今尚人の心を揺さぶり、惑わし、興奮させる。

                                         終わり
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