黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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最後の夢 五

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 さらにまた激しい攻撃。
 アベルの意識はぎりぎりまで追い詰められた。
「ああっ、あああっ、ああ――!」
 屈辱が激しければ激しいほど、快楽もきわまっていくという呪われた身体に、いつの間にか、アベルの身体は変性していた。
 もはや、それは隠せない。
 背後の閹人の人工の性器を受け入れ、アベルは感極まっていく。
「はぁぁぁぁっ……!」
 頬が濡れて鈍く光る。
 頭上で吊り上げられている手首から腕、胸、脇腹と身体は張りつめ、痩せてはいてもわずかに残る筋肉がなめらかな線をつくる。いまだに上半身にからみついている薄衣がひどく生々しく見える。稀代の美青年が両脚で踏ん張る姿は悲壮だが、なんとも猥褻だ。
「うううっ、ううっ、くぅっ!」
 アベルの悲痛な悲鳴に、ロロの雄たけびがかさなる。
「おおっ、おおっ、おおおおっ」
 右胸を揉むロロの手はそのままだが、左手は他の場所をもとめて動き、やがてアベルの股間にたどりつく。
 すでにしっかりと屹立している男の象徴をロロは伸ばした手でつかむ。
 飴色の指をからめ、扱く。
「ああっ……!」
 加えられた新たな刺激にアベルは涙をこらえきれない。
「ああっ、……だ、駄目だ! も、もぉ……!」
 無念をこめた言葉に、背後のロロは動きを弱めた。
「いくな、まだ……」
 熱い囁きが耳にひびくが、アベルは返す言葉をもたない。
 アベルの全身がはりつめたのが、見ていた者たちにはわかった。
「ああっ、は、はなせぇ……」
「俺の動きにあわせて。大丈夫だ、そのまますべて俺にまかせておくといい」
 奴隷宦官に命令されても悦楽を追わずにいられなくなったアベルは、たしかに淪落していた。
「そ、そんな……! あぁ……、ああああー!」
 アベルの白い太腿が、さらに張りつめた。

 後日、エンリケは老いた宦官から聞くことになる。実際には、宦官がいくら腰に性具をつけて交わる真似をしたところで、刺激を得て快楽を得ることは無理だろう、と。
 だが、あのときエンリケは見た。
 後ろ園を責められたあげく、絶頂をきわめて泣いたアベルの背後で、まぎれもなく宦官も絶頂を得ていたのだと。あの表情は演技ではないはずだ。
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