黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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最後の夢 一

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 犯され、汚され、辱しめられて、その美はますます開花していくのだから、アベル=アルベニス伯爵はやはり稀有な人である。
 客も屋敷の召使も、グラリオンの奴隷も、楽士たちですら、広間にいた人々は皆、アベルの打ちひしがれた様子に、魂をぬかれてしまった。

「どう? ロロ、満足できた?」
 二人の宦官に支えられ、ゆっくりと木馬から下ろされるアベルを見つめるロロの黒い目は、昏い世界を秘めている。
 売られたのか、戦で捕虜となって宦官となったのかは知らないが、男性器喪失という壮絶な体験を経て宦官という異形の奴隷となった彼の目には、修羅場と地獄を経験したものが持つ得体のしれぬ暗黒がある。
 ロロの剣呑な様子に気づいたアグスティナは、訝しむような顔になった。
「どうしたのよ? 満足できなかったというの、おまえ? これだけの人を抱けたというのに」
 ロロは首を振る。
「もう一度……やらせてくれ」
「まぁ、おまえ、贅沢ね」
 嘲笑に軽い怒りをにじませアグスティナは黒い眉を寄せる。
「もう一度抱きたというの? 一度では足りないというわけね」
「俺が抱いたわけではない」
「それは……」
 アグスティナは意味を取りかねて鼻白んだ。
 ロロは眉をしかめて、唇の端を下げて、不満そうにアベルを支える二人の朋輩を恨みがましげに見る。
「今度は、俺一人で抱きたい。こいつらの手はいらない」
「あら」
 アグスティナは一瞬、不快な顔をしたが、すぐに美しい笑みを浮かべて客たちに声高に告げた。
「皆様、もう少しお付き合いくださいませ。この奴隷の望みをかなえてさしあげましょう」
 アベルはほとんど気を失っているようだが、無情にも、アグスティナは他の宦官に目配せして、立たせる。
「わかったわ、ロロ、今度は他の者には触らせないわ。お前ひとりで充分楽しむといいわ。でも、木馬では危ないから、ここで楽しみなさい」
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