黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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仇花開花 八

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「止めれるわけがないだろう。……俺の夢だった。美しく高貴な姫君を、思うがままにし、ねじ伏せ、秘めていた淫らな本性を暴きたい。そんな夢想を幾度したことか。高貴な姫は、気位がたかくてつれなく、いつも俺のことを冷たい目で見ていた」
 そんな目で見た覚えはない、というようにアベルが首を横に振る。
「覚えていないだろう? そんな態度や目つきを、おまえはいつもしていたのだぞ」
 言って、またひと撫でしてから、まるで罰をあたえるように、公爵はアベルの右尻あたりをつねる。
「うっ……!」
 アベルは今度は悔しげに首を横に振る。
「さぁ、私が薬を塗ってあげるわ。覚悟しなさい、伯爵。これを塗ると、清純な乙女でもみずから腰を振って男を欲しがるようになるのよ」
「よ、よせ! ああっ、やめろぉっ!」
 そのあと……。
 アグスティナの粘着質ないたぶりを散々受け、アベルはぎりぎりまで追い詰められた。
 したたる媚薬が蕾を濡らし、ひろげ、指でさんざん刺激され、アベルはまたも堰をこわされ、泣きじゃくる羽目になった。
 人目にさらされ、なぶられ、よがらされ、男としても人としても尊厳を破壊されるような真似をされる。
 昇りつめされ、散らされ、また強制的に開花されて、アベルという仇花は、皮肉なほど美しく開花する。

「ああっ、いやだ! もういやだ!」
 宦官たちは容赦なくアベルを引き立てる。
「さぁ、木馬の上で、今夜の花婿がお待ちよ。伯爵は今夜は可愛い花嫁よ。せいぜい木馬の上で可愛がってもらいなさい」
 貴族にあるまじき下品さでアグスティナが笑う。引きずられるように、客たちからも笑いの渦が起こる。
 そして、宦官二人によって、アベルは無理やりに木馬の上へと押し上げられた。
「ああっ」
 グラリオンのときは、木馬に備え付けられた道具によって責められたが、今夜は、ともに乗っている宦官の腰に取り付けられた張り型によって責められるのだ。
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