黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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仇花開花 三

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 アグスティナの下品な嘲弄を、アベルは冷ややかな碧の瞳に侮蔑をこめて返した。
「ふふふ。怖い顔ね。そんなふうに取り澄ましていられるのも今のうちよ。これから、伯爵は皆の見ている前で宦官に犯されるのよ。あなたが大嫌いな異教徒にね。ホホホホホ」
 アグスティナは高慢そうに笑う。神経に引っかかる笑い方だ。
 エンリケはつい眉をひそめていた。どうも、この女も常軌を越してきている。
「そ、そんなことをして、恥を晒すのはおまえたちの方だ」
 この期におよんでもアベルの気骨はくじけない。幾たびも人として限界までの責めを受け、壊れかけた心だが、どれほど傷つけられても、アベルの心と魂は輝くことをやめない。
「なんとでもおっしゃい。どうせ、あなたから見たら、私のような女は穢れた罪人で、とんでもない毒婦なのでしょうよ。さぁ、ぼやぼやしていないで、はやく伯爵を楽しませてやるといいわ」
 宦官たちの手がアベルに伸びて来た。
 多勢に無勢である。どのみち逃げきれることはできず、アベルは唇を噛みしめるような仕草をとり、目を閉じた。見えていなければ、すべて起こっていないことになる、とでもいうように。
 せまってきた男たちの、いや、かつて男だった者たちの手が、アベルの自由をうばい、肌にからみついている上衣の端をまくりあげる。下はとうに剝きだし同然の不様なかっこうだ。
「ああっ……」
 赤銅色の腕が伸び、掌がアベルの白い尻を撫でまわす。
「うっ、ううう!」
 股間に道具を取り付けた宦官が、まるで我が物顔でアベルの臀部をつかみ、さすり、身をかがめてそこへ顔を擦りよせる。
「あっ、よ、よせ!」
 観客たちから失笑がこぼれた。
 ふざけたように、宦官は音をたてて白い双臀に接吻の雨を降らす。
 滑稽な音が客たちに聞こえているかのように、笑い声は大きくなる。
「ううっ、うううう……」
 前とおなじように上半身は他の宦官からおさえつけられ、身動き取れないアベルは、ただ歯をくいしばって、この屈辱に耐えるしかない。
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