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魔性 二
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言葉は殊勝だが、その目は爛々とひかり、油断できないものをちらつかせている。
アイーシャが細い右腕を振ると、それまで奏でられていた音楽とは、またかなり音律の違う曲が広間にひびく。
打楽器も絶妙なところで打ち鳴らされ、音楽に奇妙な華と影をつくる。
透けて見える衣の裾がゆったりと跳ねる。
アイーシャは両腕と両足を独特の間合いでうごかす。
無数に灯されていた燭台の蝋燭が、少しずつ消されていき、あたりは海の底のように暗くなっていく。
そんななか、アイーシャは帝国では見られない独特の踊りを披露しつづけた。
アイーシャの背後にならぶ女たちも、アイーシャとおなじ型の踊りをおどる。だが、アイーシャの動きにくらべると、どこかぎこちない。
客として見ていたエンリケは目を見張っていた。
最初は、今宵はまずグラリオンで有名な娼婦を見れると、小耳にはさんでいたのだが、アイーシャという名のこの女は、舞姫としてもかなりの技量があることを認めざるを得ない。
音楽もなかなか素晴らしく、否応なしに心は見知らぬ異国の奥室に飛んでいく。
グラリオンの秘宮では、こんな強烈な魅力を持つ女たちが妍をきそって、唯一の男である王の愛を手に入れるためにしのぎを削っていたのかと思うと、廃位されたとはいえグラリオンの王者とは、なんと幸福な男だろう、と思ってしまう。
楽の音は早くなり、深海でゆらめく蛇のようなアイーシャの腕はますます動きが早くなる。
音が激しくなるところで、アイーシャは脚をかなりあげて、裾を散らす。帝国では娼婦以外の女はけっしてしないことだが、すこしも蔑む気にはなれない。奇妙な迫力があるのだ。
たからかに女の笑い声が聞こえる。勝者の笑いである。
笑っているのはアイーシャだ。
つぎにアイーシャが腕を振りあげると、ゴトゴトという音がして、エンリケが目を見張ったことに、大きな……少なくとも等身大の木馬が宦官たちによって引きずられてきたのだ。
アイーシャが細い右腕を振ると、それまで奏でられていた音楽とは、またかなり音律の違う曲が広間にひびく。
打楽器も絶妙なところで打ち鳴らされ、音楽に奇妙な華と影をつくる。
透けて見える衣の裾がゆったりと跳ねる。
アイーシャは両腕と両足を独特の間合いでうごかす。
無数に灯されていた燭台の蝋燭が、少しずつ消されていき、あたりは海の底のように暗くなっていく。
そんななか、アイーシャは帝国では見られない独特の踊りを披露しつづけた。
アイーシャの背後にならぶ女たちも、アイーシャとおなじ型の踊りをおどる。だが、アイーシャの動きにくらべると、どこかぎこちない。
客として見ていたエンリケは目を見張っていた。
最初は、今宵はまずグラリオンで有名な娼婦を見れると、小耳にはさんでいたのだが、アイーシャという名のこの女は、舞姫としてもかなりの技量があることを認めざるを得ない。
音楽もなかなか素晴らしく、否応なしに心は見知らぬ異国の奥室に飛んでいく。
グラリオンの秘宮では、こんな強烈な魅力を持つ女たちが妍をきそって、唯一の男である王の愛を手に入れるためにしのぎを削っていたのかと思うと、廃位されたとはいえグラリオンの王者とは、なんと幸福な男だろう、と思ってしまう。
楽の音は早くなり、深海でゆらめく蛇のようなアイーシャの腕はますます動きが早くなる。
音が激しくなるところで、アイーシャは脚をかなりあげて、裾を散らす。帝国では娼婦以外の女はけっしてしないことだが、すこしも蔑む気にはなれない。奇妙な迫力があるのだ。
たからかに女の笑い声が聞こえる。勝者の笑いである。
笑っているのはアイーシャだ。
つぎにアイーシャが腕を振りあげると、ゴトゴトという音がして、エンリケが目を見張ったことに、大きな……少なくとも等身大の木馬が宦官たちによって引きずられてきたのだ。
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