黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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月夜に見る夢 六

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 ちゅっ……、と場違いなほど甘い音が夜にひびく。
「ううっ……、ひ、卑怯者。げ、下種、私生児!」
 アベルの怒りのこもった声に、エンリケは笑ってみせた。
「ええ。私はどうせ卑怯で下種な私生児ですからね」
 この時代、婚外子は王家の血を引いていても差別されるもので、偏見や世間の白い目が、彼の性格をゆがめたことは否めない。
「けれど伯爵、そんな下種な私生児の口や手で、ここをこんなふうにしているあなたはとんでもない淫乱だ。見かけによらず、あなたもかなり好き者だな」
「ち、ちがう、これは……、ちがう!」 
 エンリケは人差し指でアベルの茎をかるく弾く。
「くくくくく。何がちがうのですか?」
「はぁっ……!」
 痛みと刺激にアベルはのけぞった。
「うう……」
「ああ、可愛いな。アベル=アルベニス伯爵が俺の手でこんなに感じて……」
 エンリケはすぐ近くに公爵がいることを忘れて、アベルとの行為に没頭した。
「エ、エンリケ、お、おまえは、それでも騎士なのか?」
 碧の瞳は怒りに燃えて、潤んで、いっそう美しい。
「ええ、私はあなたに両陛下の御前で打ちのめされて以来、騎士の誇りを失ったのですよ。騎士としても、貴族としても、私は落ちこぼれだ。この貴族社会で完全にはぐれ者ですよ」
 エンリケの声にも恨みと、自嘲がこもっていた。
 夜に染まったエンリケの顔が、ほろ苦く笑い、一瞬、ほんの一瞬だけアベルの反抗をゆるめさせた。だが、すぐにアベルはきつく言葉を返した。
「そ、そんなことが、言い訳になるものか! 試合で負けた男が皆、おまえのように性根が腐るわけではない。おまえは生まれつきのひねくれ者なのだ!」
「ええ、そうでしょうね」
 今度は自嘲の笑みもない無表情だ。
「その生まれつきのひねくれ者が、今夜はあなたをたっぷり喜ばせてあげますよ」
 言うや、エンリケはアベルの股間に顔をうずめる。
「はぁっ……!」 
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