黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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月夜に見る夢 二

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「よろしいのかな?」
「勿論。これほどの美味を、一人占めしては悪い」
 公爵の手がアベルの剝きだしの肩にかかった途端、アベルの悲鳴のような怒鳴り声が響く。
「よ、よせ! さわるな!」
 公爵がどの程度本気なのかわからないが、目のまえに出された極上の身体を見て、このまま引き下がることはできない。
「ほう。それでは、遠慮なく」
 飢えた犬のように、エンリケは与えられた美肉に近寄った。
「く、来るな!」
 公爵は笑って見ている。
「本当によろしいのですな? 帝国一の名花の蕾をもらっても良いのかな?」
 念を押してみると、公爵は相変わらず余裕の笑顔だ。
「蕾は、いつかのお楽しみにとっておくがよろしい。今宵は、茎を味わってみてはいかがか?」
「ほう?」
 つまり、後ろ園はゆるさないが、前はいじっても良いということらしい。エンリケはいよいよ興奮してきた。
「げ、下種!」
 その言葉は、公爵とエンリケ両方に向けられたものだ。
 先ほどあえなく陥落させられたとはいえ、アベルはけっして公爵に服従するつもりはないらしい。勿論、エンリケに対しても、言われるがままに身体を許す気はないようだ。
「お綺麗なお顔をして、お口が悪い。名花というより名馬かな。それもとんだじゃじゃ馬だ。躾がなっていないのでは?」
 アベルがますますいきり立つのを心地よく眺めながら、エンリケはさらに一歩すすんだ。
「やや、おてんばでね。旅の途中でかなり躾けたつもりだが、まだまだ聞かん気がなおらないらしい」
「わ、私は公爵のものではない! こ、こんなことを私にする権利はないはずだ! さ、下がれ!」
 怒りと憎悪に燃えるアベルの全身から、青白い炎がたちのぼりそうだ。
「つれないことを言うなよ。俺のものでないなどと、よく言えたな。連日連夜、俺の手で燃えたというのに。あれほどの快楽を、誰がおまえに与えてくれる? 俺だけだぞ」
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