黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔軍の行進 一

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 それからも幾日か旅はつづき、背徳の夜もまたつづき、やがて軍はなつかしい帝都にたどりついた。
 人々の歓呼の声が都にみちる。
 大通りは、凱旋軍と、彼らを出迎える民衆で埋めつくされた。
 威武たかき、神の祝福を受けた軍隊は、帝都の大通りを進軍し、女王の待つ宮殿をめざす。勝利の行進の先頭をかざるのは、もちろん今回の遠征の主役であるエゴイ=バルトラ公爵である。
 祖国にいたときは黒の甲冑をこのんでいた公爵だが、今日のは白銀である。
 季節はまさに、帝国が夏をむかえようとしているときである。都も人々も軍隊も、光に満たされていた。
 後に、この都は国内外で〝光の都〟と呼びならわされるようになるが、それも無理はない。丘の上にある王宮は、黄金をふんだんにつかって建てられており、太陽光を受けて、まぶしいほどに輝くのだ。
 その文字通りの黄金の宮城をめざして軍隊はすすむ。
 神に愛され選ばれた軍隊は、先頭の旗持ちはもちろん、最後尾の歩兵まで、勝者の誇りに満ちて光り輝いていた。
 なかでもひと際かがやいていたのは、まちがいなくエゴイ=バルトラ公爵その人である。
 白銀の武具は輝く陽光をはじきかえし、いっそう公爵の威厳をたかめる。すぐれた体躯は帝国のもとめる理想の男性美を具現化している。
 生まれ落ちたときからすべてを手に入れていたといわれる帝国きっての貴公子は、この遠征でさらに名声をたかめ、この先も栄光につつまれた輝かしい日々をおくることになるのだろう、と誰もが思っていた。
 ……誰が知るだろう。この完璧な騎士であり貴公子であるエゴイ=バルトラ公爵の心が、腐っていることを。
 公爵の馬よりすこし離れて、彼を追うように馬に乗って行軍していたオルティスは、皮肉な想いで、人々の投げる花のなかで笑っている上官を見つめた。
 この男は、完全無欠の外見に、腐敗した魂を秘めているのである。
 そのとき、突然周囲の群衆の歓声がやんだのは、ちょうど行列が中盤にさしかかり、捕虜の列が見えるようになったからだ。
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