黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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淫逆遊戯 六

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 されるアベルも辛いだろうが、するバルバラもかなり体力的にきついはずだが、すこしも疲れた様子は見せず、あふれんばかりの気力をみなぎらせ、おのれの行為をたのしんでやっていることが見てとれる。
 不幸な生い立ちで娼婦に落ちた女だが、彼女自身、娼婦としての適性があったのではないかとさえ思える。娼婦という職業は彼女にとっては天職なのかもしれない。
 そんなことをオルティスがぼんやり考えているあいだにも、アベルの若い情感はたかめられていき、もはや神経の糸が切れる最後の瞬間をむかえようとしていることが、苦しそうな声で知れる。
「うう……! うっ、うっ……! くぅぅぅ!」
 愛戯と呼ぶには、あまりにも過酷なやりかたでバルバラはアベルを追い詰め、彼の清廉な魂を灼熱の舌で火あぶりにしている。
 じわじわと性感を高めながらも、けっして最後までは行き着かず、いつまでも崖っぷちを歩かせるようなやり方でねちねちといたぶりつづけているのだ。
 もはやされる方にとっては立派な拷問である。
 苛烈な拷問を受けた者が、あまりの辛さに耐えきれず、いっそ死を望むような心境にまでアベルは追いたてられている。
「ああ……! たのむ……」
 碧の瞳が熱く潤んで、息もたえだになりながらアベルは声をしぼりだした。
「たのむから、もぉ……!」
 すさまじい拷問によって、敬虔な信者も異教徒にされることは、本当にあるのだと、今のアベルの哀切きわまりない表情を見てオルティスは腑に落ちた。
 異端審問官たちは、真の信仰心があるものは、どれほど肉体を傷つけられようと信仰をつらぬきとおすものだから、けっして虚偽の申告などしない。拷問を受けて自白したことは真実である、と伝えるが、それが真実でないことをオルティスは知った。
 肉体にくわえられる暴力は、どれほど高潔な人格者であっても、信念を曲げずにはいられないほどに過酷なものなのだ。
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