黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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淫虐遊戯 一

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「さぁ、伯爵、指を増やすよ。大丈夫だろう、これぐらい? グラリオンにいたときは、もっと太いものを随分うまそうに呑んだというじゃないか?」
 心身の苦しみに崩れそうになっていたアベルだが、怒りが彼に力をあたえた。
「い、言うな! 許さぬ!」
「おやおや、この期におよんでもお貴族様というわけか?」
 バルバラの、アベルほどではないが整った顔が残忍そうにゆがむ。
「今更、体裁ぶってどうする気だ? あんたの淫乱ぶりは、もはや帝国中が知るところだぜ。え? 異教徒たちに散々もてあそばれた身体で、生きておめおめと祖国へ凱旋なさる気持ちはどんなものだい?」
 言葉はねちねちと陰湿になってきている。 
 オルティスは公爵が止めてくれないかと、はかない期待をしたが、公爵は面白そうに、美しい娼婦が美しい貴公子を責めたてるという淫靡な絵物語にすっかりひたっている。
「よ、よくも、そんなことを……!」
「ふん、偉そうに。俺の指で、こっちを、こんなふうにしておきながら」
「あうっ!」
 憎い敵に、そこを指ではじかれ、アベルが痛みと悔しさに頬を燃やす。
「ほら、ほら」
「あっ、ああっ!」
 気位たかいアベルにとっては、下賤の女の指で弄ばれるなど、文字どおり魂を切りさかれるほどの辛さなのだろう。
「皆知っているのだぞ。あんたが、グラリオンの後宮でなにをしたか。玉をなくした宦官どもの手管でよがったことも、後宮の淫売たちにもてあそばれたことも、あろうことか、異教徒の王の閨に侍ったことも。みんな、みんな知っているのだぞ」
 バルバラの様子は、どこか普通でなくなっている。
「どうだったい、連珠の味は? あの書物が知れわたってから、帝国の淫売宿では玉を入れて遊ぶのが流行りだしたぜ」
「それは面白そうだな」
 公爵が声を立てて笑った。
「帝国にはないような道具が、グラリオンの後宮にはずいぶんあるようだな」
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