黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔窟の夜 八

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初めて目にするマヤの滑らかな首筋を指先で味わうと、肩から腕を伝いおり、行き着いたマヤの左手を湯からすくい上げた。

白く細い薬指に、心に繋がるとされるその指に、俺の瞳と同じ色をした赤い石が輝く。

「俺のものだ……」

声に出した自覚もなく幸福に酔いしれる。
もうマヤが金を貯めて自身を買い取ることもできなければ、結婚だなんだと他の男に取られる心配もない。
俺の、俺だけの、大切な―――

「はい!」

俺の呟きに答えるように、唐突にマヤが俺を振り返った。

「全部ガル様のもので……」

ほんのりと上気した頬に張り付く濡れた髪、嬉しそうに細められた瞳、揺れる水面から透ける薄桃色の先端に、掴んだままの左手に輝く指輪。

「……ん?」

「!」
まずい!

ザバァッ

後ろからマヤの両脇を支え持って勢いよく立ち上がる。

「少々湯あたりしたようだ。もう上がろう」

「え! 大丈夫ですか?!」

心配したマヤが振り返ろうとするのを阻むように、支え持つ腕をピンと伸ばしてマヤを遠ざける。

「ああ……いや、少し水を浴びてから行く。先に自分で身体を拭いていられるか?」

「はい」

脇を支え腕を伸ばしたままぶらんぶらんとマヤを運び、浴室から出すとすぐに戸を閉めて引き返した。

「先が思いやられるな……」

浴室の壁に凭れて落とした視線の先では、欲望がはっきりと鎌首をもたげていた。
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