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魔窟の夜 七
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「ふん。あんたたちはあいつを冤罪で亡くなった不幸な聖職者だと思っているようだけれど、とんでもない。あいつは、好色で貪婪な変態野郎さ」
「まさか……! カランサ司教は……私の名づけ親なのだぞ」
バルバラの若草の瞳に不穏な影が走った。それはひどく禍々しく、はたで見ているオルティスは一瞬ひやりとした。
「へぇ……、あの変態野郎があんたの名づけ親? それはまた奇遇だな」
カランサ司教はアベルの父とは旧知の仲だった。司教が異教徒のうたがいをかけられ獄に入れられたのは帝国をゆるがす大事件であり醜聞だった。聞いたときはアベルも驚いた。
だが、司教自身は最後まで疑惑を否定して、自分の信じる神は唯ひとつと言い抜いて死んだというので、無罪を信じていた。実際、司教の死後は、彼は罠に嵌められたのではないかという噂もかなり流れたのだ。
気の毒には思っても、アベルはまだ少年で宮廷に出入りすることも滅多になく、なんの力もないうえに、家の財政問題で大変なときだったので、胸を痛めることしかカランサ司教のためにできることはなかったが。
「司教は……無実だと言われている」
「かもね」
バルバラは薄く笑った。オルティスがぞっとするほど冷たい笑いだ。
「まぁ、たしかにあいつの信じる神はひとつだろうさ。けれど、あいつにはもっと重い罪がいくつもあるのだから、死んで当然さ。あいつは、狭い牢屋に、おなじく罪をとわれた審問官たちとつめこまれ、用便すら自由にできない環境で、心身を病んで死んだのだそうさ。ある意味、死刑にされたも同然だろう。ふさわしい最期さ」
「……なんてことを」
ふるえるアベルを見つめるバルバラの目は、苛烈の一言だった。
「六歳の子どもを性欲のはけ口にするような男だぞ」
「……おまえ、カランサにやられたのか?」
さすがに問う公爵の顔には、いつものようにふざけた笑みはない。
「いいや。さすがにあの人非人でも、六つだと行為そのものはする気がしなかったようで、俺は口での奉仕を求められたのさ。あのときの、」
バルバラはそこで言葉を切った。
「まさか……! カランサ司教は……私の名づけ親なのだぞ」
バルバラの若草の瞳に不穏な影が走った。それはひどく禍々しく、はたで見ているオルティスは一瞬ひやりとした。
「へぇ……、あの変態野郎があんたの名づけ親? それはまた奇遇だな」
カランサ司教はアベルの父とは旧知の仲だった。司教が異教徒のうたがいをかけられ獄に入れられたのは帝国をゆるがす大事件であり醜聞だった。聞いたときはアベルも驚いた。
だが、司教自身は最後まで疑惑を否定して、自分の信じる神は唯ひとつと言い抜いて死んだというので、無罪を信じていた。実際、司教の死後は、彼は罠に嵌められたのではないかという噂もかなり流れたのだ。
気の毒には思っても、アベルはまだ少年で宮廷に出入りすることも滅多になく、なんの力もないうえに、家の財政問題で大変なときだったので、胸を痛めることしかカランサ司教のためにできることはなかったが。
「司教は……無実だと言われている」
「かもね」
バルバラは薄く笑った。オルティスがぞっとするほど冷たい笑いだ。
「まぁ、たしかにあいつの信じる神はひとつだろうさ。けれど、あいつにはもっと重い罪がいくつもあるのだから、死んで当然さ。あいつは、狭い牢屋に、おなじく罪をとわれた審問官たちとつめこまれ、用便すら自由にできない環境で、心身を病んで死んだのだそうさ。ある意味、死刑にされたも同然だろう。ふさわしい最期さ」
「……なんてことを」
ふるえるアベルを見つめるバルバラの目は、苛烈の一言だった。
「六歳の子どもを性欲のはけ口にするような男だぞ」
「……おまえ、カランサにやられたのか?」
さすがに問う公爵の顔には、いつものようにふざけた笑みはない。
「いいや。さすがにあの人非人でも、六つだと行為そのものはする気がしなかったようで、俺は口での奉仕を求められたのさ。あのときの、」
バルバラはそこで言葉を切った。
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