黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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魔窟の夜 一

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「見た目は白玉のようだけれど、こうして触ってみると柔らかいぐらいだ」
 正面からアベルと向かいあうかたちになって、バルバラは両手でアベルの胸を揉む。縄を柔肌に食い込ませた胸は、思春期の乙女のようにかすかにふくらんで見えた。
「ん……うう!」 
 恥辱に眉を寄せ、アベルが天を仰ぐようにのけぞる。
「は……、はなせ……!」
 バルバラのこたえは、淫らな、濡れた吸い音だった。
 ちゅっ……という、乳首を吸う音を聞いた瞬間、オルティスは脇腹から背にかけて、なんとも言いようのないむず痒さを感じた。
 女に乳首をもてあそばれるという屈辱にアベルの呼吸は乱れて大きく響く。はげしい吐息の音と、悩ましい水音がまじって、天幕のなかは、世にも淫らな官能世界と変じていく。
 オルティスは圧倒されっぱなしだ。
 生真面目なオルティスは一度も行ったことはないが、帝国の繁華街の隅にある、潔癖な人からは魔窟と呼ばれるような夜の店でおこなわれるような行為が、いや、そんな悪所であってさえも見られない淫蕩の場面が、つぎからつぎへと展開していく。
 バルバラは右の胸を吸いつくすと、今度は右胸を吸う。
「ううう……、も、もう、やめろ!」
 両手は後ろ手でしばられているので、アベルはおのれをむさぼる魔女をはねつけることもできず、苦しげに拷問のような舌責めに耐えるしかない。
 ほのかな蝋燭の明かりに照らされて、アベルの白亜の肌に、ぽつりぽつりと二輪の紅花が咲いたように乳首が赤く映える。
「可愛い……、感じてる。胸を弄っただけだというのに、ここが……」
 男の証しは娼婦の手にうばわれる。アベルの自尊心が悲鳴をあげる声がオルティスには聞こえてきそうだ。
「さ、さわるな、淫婦!」
 激しい言葉を吐きつけたアベルに、バルバラは手に力を込めるという応酬をした。
「あうっ……!」
 命そのものを、文字どおり手に取られている状況である。アベルは悔しそうに唇を噛むしかない。
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