60 / 184
訪問者 六
しおりを挟む
公爵がにやにや笑う。癖のある、嫌な笑い方だった。
「気を付けてくれよ。こんな、女神のような美しい人を傷つけるなんて許されない。俺があとで、もう一度、ちゃんとした縛り方を教えてやるよ」
オルティスはあらためてバルバラを見て、あらためて彼女が名うての娼婦だということを思い出した。
一見、無邪気で天真爛漫に見える彼女だが、こういうことを平然と言うところからして、普通の女ではない。
アベルもぎょっとした顔になってバルバラを見ている。
「ああ……、なんて美しい肌だろう。ずっと、こんな綺麗な人と遊んでみたかったんだ……」
バルバラの熱をふくんだ碧眼が、アベルの怜悧な碧眼を見つめる。
そこに一瞬、碧の火が爆ぜたようだ。
「ああ……欲しい」
バルバラは恍惚とした表情になると、アベルの半ばあらわになっている胸をさわる。
「よ、よせ!」
連日、公爵の度を越したいたぶりに翻弄され、感情が麻痺していたようなアベルだが、女の手に触れられることによって、久々に意識がはっきりと覚醒したようで、嫌悪をあらわにした。
「怖い目……。ふふ、綺麗な人は怒っても美しいのだね。ますます欲しいな」
バルバラが両手をひろげて、アベルの細い身体を抱きしめようとする。
いくらアベルが痩身でも、男の身体はバルバラの身体よりかは大きい。それでいて、傍で見ているオルティスの目には、バルバラがアベルを抱きすくめているように映るのだ。
「よ、よせ、触るな……!」
「ああ、なんて良い匂いだろう。酸っぱいような、甘いような。いやらしい匂いも混じっていて、たまらない。なんだか、癖になってしまいそうだ」
「は、離れろ!」
焦ってもがくアベルを、公爵は面白そうに見ている。
「ねぇ、公爵、はやくやろうよ。縄はあるかい?」
バルバラのあっさりとした言葉に、アベルはまたぎょっとした顔になった。
「ああ。ちゃんとお姫様にふさわしい絹紐だ」
「さすが、用意がいいね」
「気を付けてくれよ。こんな、女神のような美しい人を傷つけるなんて許されない。俺があとで、もう一度、ちゃんとした縛り方を教えてやるよ」
オルティスはあらためてバルバラを見て、あらためて彼女が名うての娼婦だということを思い出した。
一見、無邪気で天真爛漫に見える彼女だが、こういうことを平然と言うところからして、普通の女ではない。
アベルもぎょっとした顔になってバルバラを見ている。
「ああ……、なんて美しい肌だろう。ずっと、こんな綺麗な人と遊んでみたかったんだ……」
バルバラの熱をふくんだ碧眼が、アベルの怜悧な碧眼を見つめる。
そこに一瞬、碧の火が爆ぜたようだ。
「ああ……欲しい」
バルバラは恍惚とした表情になると、アベルの半ばあらわになっている胸をさわる。
「よ、よせ!」
連日、公爵の度を越したいたぶりに翻弄され、感情が麻痺していたようなアベルだが、女の手に触れられることによって、久々に意識がはっきりと覚醒したようで、嫌悪をあらわにした。
「怖い目……。ふふ、綺麗な人は怒っても美しいのだね。ますます欲しいな」
バルバラが両手をひろげて、アベルの細い身体を抱きしめようとする。
いくらアベルが痩身でも、男の身体はバルバラの身体よりかは大きい。それでいて、傍で見ているオルティスの目には、バルバラがアベルを抱きすくめているように映るのだ。
「よ、よせ、触るな……!」
「ああ、なんて良い匂いだろう。酸っぱいような、甘いような。いやらしい匂いも混じっていて、たまらない。なんだか、癖になってしまいそうだ」
「は、離れろ!」
焦ってもがくアベルを、公爵は面白そうに見ている。
「ねぇ、公爵、はやくやろうよ。縄はあるかい?」
バルバラのあっさりとした言葉に、アベルはまたぎょっとした顔になった。
「ああ。ちゃんとお姫様にふさわしい絹紐だ」
「さすが、用意がいいね」
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説


ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。



男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる