黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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明けない夜 三

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「何とでも言え。そんな浅ましい格好で偉そうに言ったところで、痛くもかゆくもないな。ほら、もっと手を早く動かしてみろ」
「ああ……!」
 残忍な笑いを見せて公爵は問う。
「どんな気分だ? 今の気持ちを言ってみろ、アベル=アルベニス伯爵」
「ううう……」
「言ってみろ」
 アベルの碧眼が燃えた。
「に、憎い! 私にこんな仕打ちをするおまえが憎くてたまらない!」
 そうアベルが叫んだ次の瞬間、アベルの若い茎はしっかりと伸び、公爵の笑声が天幕内に響きわたる。
「そうか。俺が憎いか? その憎い俺のまえで、そんな恥ずかしい真似をしているのは、さぞ悔しいだろうな?」
 アベルが心底つらそうに眉を寄せ、白い首を反らし、ふるえる声で告げた。
「く、悔しい……!」
「そうか。そんなに悔しいか?」
 うっ……、と息苦しそうに呻き声をもらしながらも、アベルは言葉をつづける。正気ではなくなりつつある。
「悔しい、悔しい、悔しい! し、死んでしまいたい!」
 公爵の非情の黒目が光る。
「残念ながら、おまえに死は許されないぞ。これからも、こうしておまえは俺の前で生き恥をさらしつづける運命なのだ」
 まるで、己が運命をつかさどる神だとでもいうような傲岸不遜な態度と口調で、公爵は死刑執行の宣言をくだすように、アベルにとって恐ろしい言葉を投げつける。
「ううっ、ううううっ……!」
「なんだ、その気のないやり方は、もっと真剣にしごけ!」
 怒気すら込めた陰険残酷な命令に、アベルは泣きじゃくりながら応えた。
 オルティスは熱が出そうだった。

 やがて……、さらに甘い地獄のような時間がねっとりと過ぎ、ついにアベルは公爵やドミンゴ、オルティスの見守るなか、己を弾けさせた。
「あっ、ああっ、ああ――」
 アベルの悲痛な声につづいて、いっそう高まる公爵の笑い声。
 ドミンゴは食い入るような目でアベルの赤裸々な姿を見つめ、オルティスはただ圧倒されて呆然としていた。
 
 こうして、辺境の土地で、禁断の夜は更けていった。
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