黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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淫夢のなかで 九

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 オルティスは、自分は夢を見ているのではないかと、熱っぽくなってきた頭でぼんやりと考えていた。
「ん……んん」
 アベルはふるえる手でみずから裾をたくりあげ、まだどこか初々しさをのこした青年の象徴をいつくしんでいる。
 白い頬をほんのり羞恥の色に燃やし、こんなときですら品位をうしなわない白い手で、男の本能にしたがった動きを取る。
 耐えられないかのように瞑ったままの目からは、時折きらきらと光るものがこぼれた。
「うう……うっ」
 噛みしめている唇がたびたび開き、そこからこぼれてくるかすかな呻き声も、天上から降りそそぐたえなる調べのようにオルティスの耳にひびく。
「ほら、もっと早く動かせ。でないと、つものも勃たないぞ」
 わざとらしいほどに下卑た言葉を投げつけ、公爵は背をそらして笑った。
「ああ……」
 アベルの手の動きはやや早くなる。
 アベルの身体の中心は、持ち主の心を反映して、いじらしげに項垂うなだれたままだったが、それでも無理強いされるようにして、かすかに萌しを示してきた。
 見ているオルティスの方が恥ずかしくなるような、いたたまれない時間がねっとりと、のたのたと過ぎていく。
 それは、苦しいような、こちらが責めたてられているような、なんともやるせない時間だった。
 アベルの白い手の動きを見ていると、オルティス自身もみずからの身体に触れて、我が身をはげしく慰めたくなる。
 そして同時にアベルの繊細可憐な芽をもなぐさめ、愛しんでやりたい衝動に駆られる。
 そう、いたぶるのではなく、愛しんでやりたいのだ。
「慣れた手つきではないか。お人形のような顔をしているおまえでも、やっぱりこういうことをしていたのだな。おまえを聖人君子のようにあがめている世間知らずの小娘らに見せてやりたないな。今のおまえのそんな姿を見たら、宮廷の小雀どもは、どう思うだろうな?」
「ああ……!」
 さすがに耐えきれなくなったのかアベルは、手を動かすことができなくなった。すかさず、公爵の叱責が飛ぶ。
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