黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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淫夢のなかで 五

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 いつもの余裕は消え、どことなく苛々した雰囲気だ。不愉快そうにドミンゴとアベルを睨んでいる。
「失礼しました……」
 ドミンゴはあわてて、アベルの顔から手をはなしたが、目にはかすかに不満がちらついている。そのことにもオルティスは内心、やや驚いた。
 ドミンゴが一瞬見せた表情には、嫉妬が感じられた。公爵相手に嫉妬を見せるとは。
「もういいだろう、そこをどけ」
 有無を言わさず、公爵がドミンゴをしりぞける。
 犬でも追い払うかのように、手で下がるように指示されたドミンゴは、かすかに鬱屈した顔を見せて、アベルから身をはなした。
 アベルは一人、簡易寝台に腰かける形になった。
「今度は、俺が相手をしてやろう。アベル、そこに立て」
 粗末な寝台を指差し、公爵が命じる。
 命じられたアベルは耳まで真っ赤に染めて、公爵を睨みつけた。
「い、嫌だ……」
「聞き分けのない奴だ。おまえは俺の捕虜で囚人なのだぞ。命令に従え。そこに立つのだ」
「断る!」
 乱された衣をかき寄せるようにしてアベルは告げた。
「こら、これ以上駄々をこねるなら、多少手荒な真似をすることになるぞ」 
 公爵の口調は楽しそうですらある。
「オルティスとドミンゴに手伝わせるぞ。二人が今度は宦官の役をすることになるのだぞ」
 刹那、あの絵がオルティスの脳裏で雷のようにきらめく。
 二人の宦官に両脇から支えられる形で嬲られるA伯爵の姿。
 全身の血が逆流した。
「いや、二人だけではない。他の兵を呼んで手伝わせることもできるのだぞ。大勢の兵士たちのまえで、みっともない格好をさせられることになってもいいのか?」
「お、おまえは卑怯だ!」
 怒りに燃えるアベルの瞳は悲愴のひとことである。
「そうだ。なんべんも言わせるなよ」
 まったくこたえることもく、あっさりと公爵は言う。
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