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グラリオンの夜、ふたたび 八
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「それで言われたとおりしたというのか、アルベニス伯爵ともあろう男が?」
「仕方なかったのです!」
公爵の揶揄の言葉にかえすドミンゴの言葉には、真実の怒りが響き、これもオルティスにはふしぎな言動に思えた。
「召使の私を人質に取られて、殺すと脅され、あのときアベル様は泣く泣く、ええ、本当に泣きじゃくりながら、みずからのお手で……」
「異教徒どもらの前で、まっぱだかでしたのか? クククク」
どこまでも残酷な公爵は問う。
「いえ、あのとき……薄紅か薄桃の布を巻いたままで、布越しにお手を動かされ」
ドミンゴはやけにまじめに答えた。
二人の男にはさまれるかたちのアベルの顔は、もはや生きた心地もなさそうだった。
「ほう? 時間はかかったか?」
「いえ、それほどには。すぐに……極められました」
言うと同時にアベルの胸の上をまさぐっていたドミンゴの指に力がこもったのが、オルティスにもわかった。
「ああ!」
ドミンゴの言葉にか、行為にか、もしくは両方にか、アベルは怒りと悲しみのこもったうめき声をはなつ。
「極められた瞬間……アベル様は、悦びの表情をされていた……」
「嘘だ……! 嘘を言うな!」
「いいえ、嘘ではありません。私はこの目で見ました。あのとき、あなたは、たしかに欲望を解放して、快感にひたっていられた」
ドミンゴは当時のことを追想しているのか、目を閉じ、脳裏にアベルのあられもない痴態を思い浮かべているようだ。
「あのときの、あの一瞬の満ち足りた表情……。あれほど美しい顔を見たことはない。あなたの最も素晴らしい顔だった」
「よくも、よくもそんなことを!」
アベルは悔しさに歯ぎしりしそうだ。
「そして、すぐに羞恥の感情をとりもどされ、また……泣かれた。ああ、あれは本当に、本当にすばらしい見物だった。見ていた私は生きていることを……この世に生まれてきたことを心から神に感謝しました」
「お、おまえは、なんという不道徳な……! 不謹慎なことを……!」
怒りにわななくアベルを見返すドミンゴの目には、奇妙な強さが光っている。
「仕方なかったのです!」
公爵の揶揄の言葉にかえすドミンゴの言葉には、真実の怒りが響き、これもオルティスにはふしぎな言動に思えた。
「召使の私を人質に取られて、殺すと脅され、あのときアベル様は泣く泣く、ええ、本当に泣きじゃくりながら、みずからのお手で……」
「異教徒どもらの前で、まっぱだかでしたのか? クククク」
どこまでも残酷な公爵は問う。
「いえ、あのとき……薄紅か薄桃の布を巻いたままで、布越しにお手を動かされ」
ドミンゴはやけにまじめに答えた。
二人の男にはさまれるかたちのアベルの顔は、もはや生きた心地もなさそうだった。
「ほう? 時間はかかったか?」
「いえ、それほどには。すぐに……極められました」
言うと同時にアベルの胸の上をまさぐっていたドミンゴの指に力がこもったのが、オルティスにもわかった。
「ああ!」
ドミンゴの言葉にか、行為にか、もしくは両方にか、アベルは怒りと悲しみのこもったうめき声をはなつ。
「極められた瞬間……アベル様は、悦びの表情をされていた……」
「嘘だ……! 嘘を言うな!」
「いいえ、嘘ではありません。私はこの目で見ました。あのとき、あなたは、たしかに欲望を解放して、快感にひたっていられた」
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「あのときの、あの一瞬の満ち足りた表情……。あれほど美しい顔を見たことはない。あなたの最も素晴らしい顔だった」
「よくも、よくもそんなことを!」
アベルは悔しさに歯ぎしりしそうだ。
「そして、すぐに羞恥の感情をとりもどされ、また……泣かれた。ああ、あれは本当に、本当にすばらしい見物だった。見ていた私は生きていることを……この世に生まれてきたことを心から神に感謝しました」
「お、おまえは、なんという不道徳な……! 不謹慎なことを……!」
怒りにわななくアベルを見返すドミンゴの目には、奇妙な強さが光っている。
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