黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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グラリオンの夜、ふたたび 七

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「誇りたかいアベル様が、お美しいアベル様が、よもやあんなことをされるとは……。いえ、あれはあの淫婦に強制されてのこと。……それにしても、他の行為はすべて宦官や連中によって無理やりやらされたことですが、あのときはアベル様は、みずからの手で、」
「あ、あれも強制だ!」
 アベルは顔を真っ赤にして抗議した。
「なんだ、やっぱりそうしたのではないか?」
 茶々を入れるような公爵の声。
「ちがう! あんなこと……私の本意ではない!」
 全身から火を噴くようにしてアベルが否定の言葉を放つ。
「そうですとも。ですから、私はあのときの絵と文だけは、世に出さずに秘めております。帝国では、私だけが知っていることです。……あれは、グラリオン後宮で見た悪い夢だったのです」
 口ではアベルをなだめるようなことを言いながら、ドミンゴの青目はたぎる欲望でどす黒くさえ見える。
 その黒目は、うつつのこの世にはない淫獄の夢を映していた。今聞いている異常な話は、すべてこの男の狂った頭のなかで作り出した妄想ではないかとオルティスは本気でうたがった。
「ほう? 絵には残しているのだな?」
 公爵の黒目も欲望に光る。
「はい。今も、私の行李のなかに……」
 アベルの肩に顔をうずめるようにして、ドミンゴは恍惚とした顔になった。
「そうか。では、あとで見せてもらおう。さぞ、素晴らしいものだろうな。じかに見れたおまえが羨ましいぞ」
「ええ、それはもう。あんな素晴らしい、美しい光景など、このさき一生見ることは出来ないでしょう」 
 ドミンゴは極上の美酒に酔いしれたようだった。いや、魔酒だろうか。
「この、世にもたぐいまれな貴公子が、帝国一の麗人が……、腰に女物の下帯をまかれて、淫売や宦官奴隷どもの前で見世物のようにされて……お気の毒に、あの厚化粧をした地獄に『おまえみずからの手でやって見せるのよ』と命じられて……」
 聞いているオルティスは背に熱い汗を感じた。
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