黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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黒い轍 十一

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 今朝、粗末な兵舎がわりの天幕で起きたときは、すぐに神への祈りをささげ、三年前に相次いで逝った両親の魂のために祈り、許嫁のことを想って慎ましい幸福感をおぼえた自分が、それからわずか半日後の今、いったい何をしているのだろう。
 こともあろうに虜囚にされたといはいえ、若き貴族の白い脚に欲情しているとは。しかも相手はおなじ男だというのに。
 我に返ったオルティスは今更ながらに己を恥じた。
 男が男に欲望を持つというのは、それだけですでに大罪となる。そう教えられ、信じて生きてきたはずなのに。
 実際、オルティスは兵士となった最初の年に、都の広場で同性との性交渉の現場を見られた男が縛り首にされるのを目にしたこともある。
 まだ若い、なかなか整った顔立ちの男で、哀れにも思ったが、罪を犯したのだから仕方ないと思っていた。その場にいた群衆も、野次をとばして犯罪者の処刑を笑って見ていた。火あぶりにされないだけましだと囁く人もいれば、なぜあんな奴を火あぶりにしないのだ、と罵る人もいた。男色行為は、本来なら、火刑にされてしかるべき罪とされている。
 そんな犯罪者とおなじ罪を自分は犯そうとしていたのだ。
 あらためて、恥と恐怖を感じてオルティスはいたたまれなくなる。
(駄目だ。この人を見ていると、どうにも堪らない気持ちになってくるのだ)
 オルティスはアベルから少し離れた。だが、公爵から命じられているので、あまり距離をおくこともできない。
 視界に、見るに耐えないアベルの姿が常に入るところにいなければならない。
 この先、こんな危ういものを見つづけなければならないのだ。
(ああ、どうか、祖国に帰るまで俺が正気でいられますように……)   
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