黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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黒い轍 八

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(公爵にされたことで……苦しんでいるのだ……。後ろに入れられて悦ぶ、いや、反応することなどあるのだろうか)
 こんなことを考えること自体罪ぶかく恥ずかしいのだが、オルティスは考えずにいられない。
 手練れの娼婦などは、それこそ公爵気に入りのバルバラのように、客のもとめに応じて後ろの園を使うという。演技ではなく、本当に感じる者もいると悪友が酒の席で言っていたことがある。
(慣れるとひどく良いらしいぞ……)
 それを聞いたときは、信心ぶかいオルティスは、なんという冒涜的な話だと不愉快な気持ちになったものだが、いまアベルがその禁じられた悦びを得ているのだ。そう思うと、いてもたってもいられない気持ちになってくる。
 そっと、アベルの顔色をうかがってみる。
 やはり苦しげに顔をしかめ、必死になにかに耐えるようにして目を閉じている。
 痛ましく思うのだが、オルティスは奇妙なものを感じてしまう。
 アベルの表情には苦痛と、別の感情も見えなくはないのだ。
 たしかにひどく辛そうだが、苦しみが九ならば、あとひとつは……、愉悦だろうか。
「う……、うう……ん」
 稀代の麗人が、もじもじと、腰を馬の背で揺らしているのを見ると、オルティスは体中の血が逆流する錯覚がした。
「う……ん」
 やがてオルティスは気づいた。
(まさか……)
 最初は信じられなかった。だが、間違いない。
 アベルは、アベル=アルベニス伯爵は、あろうことか裸馬の背で悶えているのだ。
 アベルの頬はますます赤くなり、首筋には玉の汗が光っている。時折り、辛そうに縛られた身体を伸ばすが、大きく動くことはできず、あきらめて縄に身をゆだねるようにして元のように前傾の姿勢をとる。その都度、腰が揺れるのだ。
 淫欲に燃えて、身体を揺らしているのだ。
 オルティスの目は、目当ての箇所へと向かう。
 前かがみになっているアベルの前方。身体の中心へ。
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