黄金郷の白昼夢

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
9 / 184

白昼の虜囚 八

しおりを挟む
「うっ……、うう……! あっ、や、やめ、やめろ……! ああっ」
「しっかりしろ、なんだ、これぐらいで。ほら、二つ目いくぞ」
「ああっ!」
 いや、いや、と幼児のようにアベルが首を横にふる。そのつど、オルティスの胸も揺れる。
「そら、三つ目だ」
 公爵の声に嘲笑がふくまれていた。
「すごいな。うまそうに呑んでいくぞ、おまえの蕾は」
「くぅー」
 悔しげにアベルが頬を染めてうつむく。同時に、オルティスの胸に爪をたてた。
 その仕草が、表情がひどくいじらしく思えて、オルティスの唇は開いていた。
「伯爵……もう少し、辛抱なさってください。もう少しです」
「ああ、いや……!」
 可哀想に、アベルの目尻には光るものがあった。
 極粒の玻璃玉のようなその光は、それこそアベルの砕けた自尊心の破片のように思えて、オルティスの胸に突き刺さってくる。
(お気の毒に……)
 我知らず、オルティスは腕の力を抜き、優しさをこめてアベルの肩を抱きしめていた。
「さ、全部入ったぞ」 
 その声に、あわてて身を離した。頬が熱くなっているのが自分でもわかってオルティスはあわててしまう。
 そんな自分を見て公爵が笑っているのを見て、いっそう羞恥に身をすくめた。
「待たせたな、ほら、この馬に乗れ」 
 先ほどより近づいてきていた馬と従者の存在に、アベルの顔は一気に青ざめる。
「い、いやだ! う……馬はいやだ!」 
 エメラルドの瞳に恐怖と嫌悪をうかべてアベルは抗議したが、それで止めるような男ではない。
 公爵が苛烈で残忍なところがあることは、かれの部下たちのあいだではひそかに噂になっていた。
(知っているか? バルトラ公爵にはお気に入りの娼婦がいてな……)
 朋輩がおもしろそうに囁いたあの噂……。
(裏社交の世界では知られた美人らしいが、その娼婦に……人に言えない遊びをさせるらしいぞ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...