黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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白昼の虜囚 七

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 それよりも、いっそうアベルの体温を感じて、心臓が割れそうになることの方が辛い。
「いいか、暴れるなよ」
 公爵は貴顕きけんの身でありながら、平然と地に片足をつけると、アベルの禁断の園を凝視する。
 指で白い肌をこじあけ、碧の淫具を詰め込む。
「ああ……!」
 アベルが腕のなかで身をよじった。オルティスはいっそう力をこめて麗人を抱きしめる。
 やわらかな、けれど芯には固いものを秘めた肢体を抱きしめているオルティスは、一瞬、眩暈がしそうになった。
(俺は今、アベル=アルベニス伯爵を抱きしめているのだ……)
 祖国にいたときは遠目にしか見たことのない宮廷の名花。女たちの噂で、国で一番の美人は誰かとなると、社交界であまたの男たちと浮き名をながした侯爵未亡人アグスティナ、女王のいとこであるオダリス王女、そしてアルベニス伯爵の名が、きまってかならず挙がったものだ。
 宮廷雀はもちろん、庶民のあいだでも名高い〝帝国三大美人〟のひとり、アルベニス伯爵を抱きしめているのだ。
 オルティスの心も悲鳴をあげそうになった。
 オルティスには男色の趣味はない。だが、若くまじめな彼は、高価な宝石を貴重に思うように、優れた名画に感動するように、純真な感受性から、ほのかにアベル=アルベニス伯爵に憧憬の気持ちを持っていたこともあった。美しい女優にあこがれるような他愛もないものだったが。
 だが、そんな遠い人だと思っていたアベルが、今自分の腕のなかで震え、もだえているのだ。
「ああ! よせっ、よせというのに!」
 公爵の指と、それがもたらした圧力が、繊細な箇所を刺激したようだ。伯爵は殺されかけた猫のように暴れた。
「こら、暴れるな! おい、しっかり押さえていろ」
「は、はい」
 あわてて力を入れなおす。
「ああ……」
 オルティスの目には見えないが、アベルの辛そうに寄せられた金の眉から、公爵が目的を果たしていく過程がわかる。
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