黄金郷の白昼夢

文月 沙織

文字の大きさ
上 下
6 / 184

白昼の虜囚 五

しおりを挟む
 オルティスの声に、びくっ、と果肉のように瑞々しい尻が震えた。公爵の腕のなかでアルベニス伯爵は必死に身をよじっているので、身体がひねられ臀部が見える。ほとんど本能的な羞恥で、前を隠そうとしているせいだろう。
「面白いだろう? グラリオンにはこういうものを専門に売る店があるらしくてな。見ろ、このなかに……道具が入っているのだ」
 公爵は淫靡な笑いを浮かべる。彫の深い、ととのった顔だちだが、どこか魔物めいた笑い方だ。
「ああっ! い、いや!」
 耐えきれない、というふうに伯爵、アベルが悲鳴をあげた。
 オルティスは目を離せない。
 白い肉を割って、革紐がたぐられるのと同時にで出てきたのはエメラルドだった。
 ぷつり――。そんな音が聞こえそうだ。
 ひとつだけではなかった。
 なかに糸を通してあるらしく、首飾りのように碧の貴石が連なっているのだ。研磨されており、球形にちかい。
「あっ、ああっ、や、やめろ!」
 ぶるぶるとアベルはふるえ、公爵の胸に――おそらくは不本意なのだろうが――顔をうずめた。
 ふたつ、みっつ……。
 アベルは公爵の胸にさらに深く身をすくめた。今の彼には、そこしか逃避する場所がないのだろう。
「ほら、どうだ? そんな大きなものではないだろう? 物足りないぐらいではないか、おまえには?」
 濡れてきらきら光るエメラルドを、得意げに陽光にかざす公爵は、巷の悪童のようだ。
 だがそれを蔑むことは今のオルティスにはできない。
 世にも罪深い三つの石が宙で揺れて、オルティスを惑乱させ、まともにものを考えさせないのだ。
 気づくと、馬が嘶いている。
 馬の側にいる従者の目にも、この状況がまる見えだ。そう若い男でもないが、顔を赤らませ、目を伏せている。それでも、ちらちらと様子をうかがっているのが知れて、オルティスまで恥ずかしくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

屈した少年は仲間の隣で絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...