黄金郷の白昼夢

文月 沙織

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白昼の虜囚 五

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 オルティスの声に、びくっ、と果肉のように瑞々しい尻が震えた。公爵の腕のなかでアルベニス伯爵は必死に身をよじっているので、身体がひねられ臀部が見える。ほとんど本能的な羞恥で、前を隠そうとしているせいだろう。
「面白いだろう? グラリオンにはこういうものを専門に売る店があるらしくてな。見ろ、このなかに……道具が入っているのだ」
 公爵は淫靡な笑いを浮かべる。彫の深い、ととのった顔だちだが、どこか魔物めいた笑い方だ。
「ああっ! い、いや!」
 耐えきれない、というふうに伯爵、アベルが悲鳴をあげた。
 オルティスは目を離せない。
 白い肉を割って、革紐がたぐられるのと同時にで出てきたのはエメラルドだった。
 ぷつり――。そんな音が聞こえそうだ。
 ひとつだけではなかった。
 なかに糸を通してあるらしく、首飾りのように碧の貴石が連なっているのだ。研磨されており、球形にちかい。
「あっ、ああっ、や、やめろ!」
 ぶるぶるとアベルはふるえ、公爵の胸に――おそらくは不本意なのだろうが――顔をうずめた。
 ふたつ、みっつ……。
 アベルは公爵の胸にさらに深く身をすくめた。今の彼には、そこしか逃避する場所がないのだろう。
「ほら、どうだ? そんな大きなものではないだろう? 物足りないぐらいではないか、おまえには?」
 濡れてきらきら光るエメラルドを、得意げに陽光にかざす公爵は、巷の悪童のようだ。
 だがそれを蔑むことは今のオルティスにはできない。
 世にも罪深い三つの石が宙で揺れて、オルティスを惑乱させ、まともにものを考えさせないのだ。
 気づくと、馬が嘶いている。
 馬の側にいる従者の目にも、この状況がまる見えだ。そう若い男でもないが、顔を赤らませ、目を伏せている。それでも、ちらちらと様子をうかがっているのが知れて、オルティスまで恥ずかしくなった。
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