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白昼の虜囚 三
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祖国の宮殿や社交界では美貌で知られた伯爵だが、これほど近くで見たのは、思えば初めてだ。
(女人でも、これほど美しい人はいないだろうな……)
オルティスには親が決めた許嫁がおり、祖国の都で彼の帰りを待ちわびている。
彼より三つほど歳下の十七歳で、祖国を出るまでは、充分可愛らしく美しい娘だと思っていたが、今その想いはこのグラリオンの太陽の下の一粒の氷のかけらのように、はかなく消えてしまった。そんな自分を戒める声もない。
噂にたがわず、いや噂以上の伯爵の麗貌に、目をうばわれずにいられないのだ。オルティスは頬が熱くなるのを感じた。
そんなオルティスの若者らしい初々しい反応を皮肉な目つきで見ながら、公爵は冷たい声で告げてきた。
「安心しろ、落ちないようにちゃんと縛ってやる。これでな」
にんまりと笑ってバルトラ公爵が見せたのは、それこそ罪人をしばる荒縄だ。
「あ、あの……」
オルティスは頬が上気するのを自覚した。背がぞくぞくする。腰から背骨、頭の頂点へと、小さな雷が走りぬけたようだ。
「それは、あの……」
オルティスはなんと言ってよいかわからず、魚のように口をあけたり閉じたりしてしまう。我ながら不様だ。
「本当は、あまり肌を傷つけたくないのだが、なんといっても栄えある凱旋部隊の目玉だからな、伯爵は。これでしっかり縛って民に見せつけてやるぞ」
「そ、それは……」
オルティスの背に汗が走った。
バルトラ公爵は本気で言っているのだろうか。悪い冗談ではないだろうかと疑いたくなる。
戦争に勝利した軍隊が、捕虜を縛りあげて戦利品のように誇示しながら行進する野蛮な習慣は、たしかに帝国にもある。
だがアベル=アルベニス伯爵は、まがりなりにも貴族で、女王の信頼もあついと聞く。たしかにここ最近、奇妙な噂も聞くが、だがけっしてそんなふうに扱っていい相手ではないはずだ。
なによりもオルティスがバルトラ公爵の言葉に頷けないのは……、
オルティスはあらためて伯爵を見た。
(女人でも、これほど美しい人はいないだろうな……)
オルティスには親が決めた許嫁がおり、祖国の都で彼の帰りを待ちわびている。
彼より三つほど歳下の十七歳で、祖国を出るまでは、充分可愛らしく美しい娘だと思っていたが、今その想いはこのグラリオンの太陽の下の一粒の氷のかけらのように、はかなく消えてしまった。そんな自分を戒める声もない。
噂にたがわず、いや噂以上の伯爵の麗貌に、目をうばわれずにいられないのだ。オルティスは頬が熱くなるのを感じた。
そんなオルティスの若者らしい初々しい反応を皮肉な目つきで見ながら、公爵は冷たい声で告げてきた。
「安心しろ、落ちないようにちゃんと縛ってやる。これでな」
にんまりと笑ってバルトラ公爵が見せたのは、それこそ罪人をしばる荒縄だ。
「あ、あの……」
オルティスは頬が上気するのを自覚した。背がぞくぞくする。腰から背骨、頭の頂点へと、小さな雷が走りぬけたようだ。
「それは、あの……」
オルティスはなんと言ってよいかわからず、魚のように口をあけたり閉じたりしてしまう。我ながら不様だ。
「本当は、あまり肌を傷つけたくないのだが、なんといっても栄えある凱旋部隊の目玉だからな、伯爵は。これでしっかり縛って民に見せつけてやるぞ」
「そ、それは……」
オルティスの背に汗が走った。
バルトラ公爵は本気で言っているのだろうか。悪い冗談ではないだろうかと疑いたくなる。
戦争に勝利した軍隊が、捕虜を縛りあげて戦利品のように誇示しながら行進する野蛮な習慣は、たしかに帝国にもある。
だがアベル=アルベニス伯爵は、まがりなりにも貴族で、女王の信頼もあついと聞く。たしかにここ最近、奇妙な噂も聞くが、だがけっしてそんなふうに扱っていい相手ではないはずだ。
なによりもオルティスがバルトラ公爵の言葉に頷けないのは……、
オルティスはあらためて伯爵を見た。
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