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ぽっちゃり女子×犬系男子14
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「うっそ告白された!?」
楠田くん達から逃げてしまった私は千紗達と合流した。
唐揚げや綿あめなどを両手に抱えて文化祭を楽しんでいる梨香さん達の後ろで、私は千紗とこそこそと話していた。
「それで、なんて返事したの?」
キラキラと目を輝かせて私を見つめる千紗は希望に溢れている…ように見える。
「返事は…してない。」
急がないって言ってくれたし…
消え入るようにそう言った私に、千紗は能面のような顔をした。
…怖っ
「そりゃ楠田くんは優しいからそう言うだろうけど、本当は一刻も早く返事が欲しいと思ってるよ!」
自分の言ったことにとても納得しているのか、千紗はさらに力強く頷く。
「いやー!やっぱりね前も言ったけど、私は楠田くん推しだからねー!嬉しい!」
これだけ恋を応援してくれない友人も珍しいと思うが、千紗はほぼ3年間私と楠田くんと関わった。
相性や性格を考えてくれて、そして何より恋愛は1人ではできないということを知っていてそう言ってると思う。
「うん、楠田くんは本当に素敵な人だよね。」
でも、今私に言えるのはこれだけで、それ以外の言葉は見つからなかった。
*
あれから結局日が暮れるまで文化祭を楽しんだ私たちは、夏目荘に帰ってくると一斉にソファに座り込んだ。
「あー、楽しかった!」
でも足パンパン~!
と早速脚をマッサージし始める梨奈さん。
「本当ですね!」
砂本さんもその横で満足げにため息をつく。
「いやあ、うちの大学とはまた雰囲気が違ったけど、とてもいい大学だね!」
ニコニコと笑いかけてくれる夏目さんになんだか嬉しくなる。
「今日はみなさんありがとうございました!」
冷蔵庫からよく冷えたレモネードを3人に配っていると、様々なところから一斉にスマホの着信音が鳴った。
「あっ、陽介からだ。今日マリちゃん家に泊まるから晩御飯いらないそうです。」
一番にスマホを見た梨奈さんがそう教えてくれる。
私もスマホに目を落とすと、夏目荘のグループチャットに陽介くんからの連絡が入っていた。
…お泊まり。仲良しだ。
大学で見たお似合いの2人を思い出す。
心に渦巻くぐるぐるとしたものにふたをして私はにっこり笑顔を作る。
「じゃあ陽介もいないことだし、今日はお寿司の出前でもとろうか!」
まるでいたずらっ子のように笑う夏目さんに私たちは喜んで賛成した。
「ふー、お腹いっぱい!」
あの後夏目さんが頼んでくれた豪華な出前寿司をみんなで思う存分食べた。
そして梨香さんはお寿司の写真を撮り、陽介くんに送りつけていた。
地味な嫌がらせだ。
思い出して思わずくすりと笑っていると、スマホの着信音が鳴った。
…電話だ!
画面を見るとそこには楠田くんの文字。
「好きなんだ。」
思わず今日の出来事がフラッシュバックしてしまう。
だめだ。今一気に体温上がった気がする。
落ち着け、落ち着くんだ。
すう~っと深呼吸をして私は電話にでる。
「はい、高瀬です。」
自分でも納得のいく落ち着いた声だ。
「あ、高瀬さん、こんばんは。今大丈夫かな?」
そして楠田くんはいつも通りの穏やかな声。
「うん、大丈夫だよー。」
平然を装って平然を…
と、ここで私は無理やり楠田くん達から逃げてしまったことを思い出した。
うわ!そういえば私は2人にすごく失礼なことを…!
「今日はごめんね!急に帰っちゃったりして…美々ちゃんにも一緒にまわるって約束したのに…」
あまりにも自分のことに必死で…
あり得ない、ごめんなさいと何度も繰り返していると、電話口からくすくすと笑う声が聞こえた。
「高瀬さん、大丈夫だよ。美々、高瀬さんと一緒に過ごせてすごい喜んでた。今高瀬さんがくれた星のキャンディ抱き締めて眠ってるよ。」
美々ちゃんのその姿を想像して、胸がきゅんとなった。
「今日は本当にありがとう。それに、僕があんな時に高瀬さんが好きだって言ったから悪いんだ。ごめん。」
そう穏やかに淡々と話す楠田くん。
え、うわストレートにまた…!
「ううん……ありがとう。あの…嬉しかった。」
あの時はびっくりしすぎて何も反応できなかったが、素直な気持ちを伝える。
でも、私には疑問がある。
でもこれは聞いてもいいものかどうなのか…
1人で悶々としていると、
「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも多分高瀬さん、いっぱい質問あるんじゃないかな。」
心なしかさっきより柔らかくなった楠田くんの声。
そして…
ええありますとも!聞きたいことがたくさん!
まず、いつから好きだったの?私のどこを!?(個人的にここが1番気になる。)
そして告白のタイミング!
今まで教室とかで2人きりになったこと、何度かあったよね!
美々ちゃんの目の前で、道の途中で…
率直にびっくりしました!
…なんて言えるはずもなく。
「いや、そんな質問なんて…」
あははとごまかしてしまう。
そっか…とささやくように言った楠田くんを最後に、私たちの間に沈黙が落ちる。
「高瀬さんが好きって気づいたのは2年前なんだ。」
そして唐突に楠田くんが話し始めた時、心臓が跳ねた。
…何回も何回も好きと言わないでほしい心臓に悪いから!
カッと頬に熱が集まるのを感じる。
「ああ、僕、高瀬さんと一緒にいるとすごく優しい気持ちになれるなあ、ずっと一緒にいれたらいいなあって思ったんだ。でも、高瀬さんはあんまり恋愛とか興味が無さそうだったし、僕も気持ちを伝えるのは怖かったから…」
今まで言わなかった。
「でも今日、伝えられてよかったと思った。」
あああそんな嬉しそうに言わないで。
電話ごしでも分かる楠田くんの嬉しそうな声に、私はさっきからたじたじだ。
楠田くんはクールだと思っていた。いや、実際に冷静でクールだ。
でもこのギャップは…
「楠田くん、あの…本当にありがとう。」
やっとしぼりだした私の声はかすれていた。
そんな私に楠田くんはふふふと笑うと
「うん、おやすみ」
そう言って電話を切った。
甘々だ。楠田くんは多分、恋人に対して非常に甘々だ。(知らないけど)
不覚にもきゅんきゅんしてしまった。
まるで私が少女漫画の主人公になったかと思った。(すごい勘違いだけど)
この日は、楠田くんとの電話の内容が頭の中でずっとぐるぐるしていて、あまり眠れなかった。
楠田くん達から逃げてしまった私は千紗達と合流した。
唐揚げや綿あめなどを両手に抱えて文化祭を楽しんでいる梨香さん達の後ろで、私は千紗とこそこそと話していた。
「それで、なんて返事したの?」
キラキラと目を輝かせて私を見つめる千紗は希望に溢れている…ように見える。
「返事は…してない。」
急がないって言ってくれたし…
消え入るようにそう言った私に、千紗は能面のような顔をした。
…怖っ
「そりゃ楠田くんは優しいからそう言うだろうけど、本当は一刻も早く返事が欲しいと思ってるよ!」
自分の言ったことにとても納得しているのか、千紗はさらに力強く頷く。
「いやー!やっぱりね前も言ったけど、私は楠田くん推しだからねー!嬉しい!」
これだけ恋を応援してくれない友人も珍しいと思うが、千紗はほぼ3年間私と楠田くんと関わった。
相性や性格を考えてくれて、そして何より恋愛は1人ではできないということを知っていてそう言ってると思う。
「うん、楠田くんは本当に素敵な人だよね。」
でも、今私に言えるのはこれだけで、それ以外の言葉は見つからなかった。
*
あれから結局日が暮れるまで文化祭を楽しんだ私たちは、夏目荘に帰ってくると一斉にソファに座り込んだ。
「あー、楽しかった!」
でも足パンパン~!
と早速脚をマッサージし始める梨奈さん。
「本当ですね!」
砂本さんもその横で満足げにため息をつく。
「いやあ、うちの大学とはまた雰囲気が違ったけど、とてもいい大学だね!」
ニコニコと笑いかけてくれる夏目さんになんだか嬉しくなる。
「今日はみなさんありがとうございました!」
冷蔵庫からよく冷えたレモネードを3人に配っていると、様々なところから一斉にスマホの着信音が鳴った。
「あっ、陽介からだ。今日マリちゃん家に泊まるから晩御飯いらないそうです。」
一番にスマホを見た梨奈さんがそう教えてくれる。
私もスマホに目を落とすと、夏目荘のグループチャットに陽介くんからの連絡が入っていた。
…お泊まり。仲良しだ。
大学で見たお似合いの2人を思い出す。
心に渦巻くぐるぐるとしたものにふたをして私はにっこり笑顔を作る。
「じゃあ陽介もいないことだし、今日はお寿司の出前でもとろうか!」
まるでいたずらっ子のように笑う夏目さんに私たちは喜んで賛成した。
「ふー、お腹いっぱい!」
あの後夏目さんが頼んでくれた豪華な出前寿司をみんなで思う存分食べた。
そして梨香さんはお寿司の写真を撮り、陽介くんに送りつけていた。
地味な嫌がらせだ。
思い出して思わずくすりと笑っていると、スマホの着信音が鳴った。
…電話だ!
画面を見るとそこには楠田くんの文字。
「好きなんだ。」
思わず今日の出来事がフラッシュバックしてしまう。
だめだ。今一気に体温上がった気がする。
落ち着け、落ち着くんだ。
すう~っと深呼吸をして私は電話にでる。
「はい、高瀬です。」
自分でも納得のいく落ち着いた声だ。
「あ、高瀬さん、こんばんは。今大丈夫かな?」
そして楠田くんはいつも通りの穏やかな声。
「うん、大丈夫だよー。」
平然を装って平然を…
と、ここで私は無理やり楠田くん達から逃げてしまったことを思い出した。
うわ!そういえば私は2人にすごく失礼なことを…!
「今日はごめんね!急に帰っちゃったりして…美々ちゃんにも一緒にまわるって約束したのに…」
あまりにも自分のことに必死で…
あり得ない、ごめんなさいと何度も繰り返していると、電話口からくすくすと笑う声が聞こえた。
「高瀬さん、大丈夫だよ。美々、高瀬さんと一緒に過ごせてすごい喜んでた。今高瀬さんがくれた星のキャンディ抱き締めて眠ってるよ。」
美々ちゃんのその姿を想像して、胸がきゅんとなった。
「今日は本当にありがとう。それに、僕があんな時に高瀬さんが好きだって言ったから悪いんだ。ごめん。」
そう穏やかに淡々と話す楠田くん。
え、うわストレートにまた…!
「ううん……ありがとう。あの…嬉しかった。」
あの時はびっくりしすぎて何も反応できなかったが、素直な気持ちを伝える。
でも、私には疑問がある。
でもこれは聞いてもいいものかどうなのか…
1人で悶々としていると、
「そう言ってもらえて嬉しいよ。でも多分高瀬さん、いっぱい質問あるんじゃないかな。」
心なしかさっきより柔らかくなった楠田くんの声。
そして…
ええありますとも!聞きたいことがたくさん!
まず、いつから好きだったの?私のどこを!?(個人的にここが1番気になる。)
そして告白のタイミング!
今まで教室とかで2人きりになったこと、何度かあったよね!
美々ちゃんの目の前で、道の途中で…
率直にびっくりしました!
…なんて言えるはずもなく。
「いや、そんな質問なんて…」
あははとごまかしてしまう。
そっか…とささやくように言った楠田くんを最後に、私たちの間に沈黙が落ちる。
「高瀬さんが好きって気づいたのは2年前なんだ。」
そして唐突に楠田くんが話し始めた時、心臓が跳ねた。
…何回も何回も好きと言わないでほしい心臓に悪いから!
カッと頬に熱が集まるのを感じる。
「ああ、僕、高瀬さんと一緒にいるとすごく優しい気持ちになれるなあ、ずっと一緒にいれたらいいなあって思ったんだ。でも、高瀬さんはあんまり恋愛とか興味が無さそうだったし、僕も気持ちを伝えるのは怖かったから…」
今まで言わなかった。
「でも今日、伝えられてよかったと思った。」
あああそんな嬉しそうに言わないで。
電話ごしでも分かる楠田くんの嬉しそうな声に、私はさっきからたじたじだ。
楠田くんはクールだと思っていた。いや、実際に冷静でクールだ。
でもこのギャップは…
「楠田くん、あの…本当にありがとう。」
やっとしぼりだした私の声はかすれていた。
そんな私に楠田くんはふふふと笑うと
「うん、おやすみ」
そう言って電話を切った。
甘々だ。楠田くんは多分、恋人に対して非常に甘々だ。(知らないけど)
不覚にもきゅんきゅんしてしまった。
まるで私が少女漫画の主人公になったかと思った。(すごい勘違いだけど)
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