夏目荘の人々

ぺっこ

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ぽっちゃり女子×犬系男子2

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私は、物心ついた頃から自分が他の人より大きいことは知っていた。横に。


それでも小学生の頃は、みんなより背が高いことも相まってお姉さんのような存在で、毎日楽しく生活していた。


まあ修学旅行とかで撮られた写真を見て、みんなの2倍くらいの大きさがあるって分かった時はさすがにびっくりしたけど。


それでも普段の生活で自分を客観的に見ることなんてないから気にしなかった。


子供服はなかなか入らないから、8歳上の姉と大人の服のお店に行っていたこともあり、いつのまにかオシャレが好きになった。

そんな私は夢見がちで、いつかかっこいい王子様が自分にも現れると信じていた。


でも、中学に上がって、男子から体型でからかわれることが増えた。

隣の席になった男の子から、露骨に嫌な顔をされたこともある。

「あいつの隣、恥ずかしいんだけど。」

と友達に言っているのを聞いた。

ああ、私の存在は恥ずかしいのかと冷静に思った。

そんな私は吹奏楽に入り、少し痩せた。

でも、男子の変わらない反応、深くなるガールズトーク、ネットで見た情報から自分は恋愛対象になることはないと、幼いながらに理解した。


高校生になり、周りの身長も体格も大きくなったことから、私の体型はそんなに目立たなくなったし周りももう何も言わなくなった。

それでも周りと比べればぼっちゃりしているし、もう恋愛へ憧れることはしなくなった。

それよりも、この体型で生活を円滑に進めるために身につけた人当たりのよさで友達がたくさんできたことがとても嬉しかった。

マスコットキャラのような位置を手に入れて、私は満足していた。

でも…
誰か1人の特別になりたい。
夢見がちだった小学生の私が描いた夢。


行き場のなくなったこの夢は、今でも心の奥でくすぶっている。

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