20 / 25
20日目
赦された街
しおりを挟む残された虚無や悔しさを
もう一度味わうとは思わなかった。
重い体とスコップを引きづり
次へと向かう。彼の遺した大切な人を
目指して。
見えてきた。確かにこの時代にしては
栄えている街がある。なるほど。
米軍が駐屯しているのか、道理で。
日本人の女は中働きとして使われていた。
生きるために体と立場を犠牲にする。
そんな非国民の集まる場所。
そこに1人、異質を放つ女性が居た。
白い大きな洋服を着て、米軍のお偉いさんに
挨拶をする。綺麗な人だ。まるでこの戦争に
関係が無いかのようなそんな面持ちだった。
街の連中が俺を見てくる。
みすぼらしい格好の俺を
米軍の兵士が引き止める。
すかさずに写真を見せた。
そこでなんとなく察しがついたようで
すぐに手を離した。
そしてすぐにその女性へ声をかける。
この男を知らないか。
そう聞く。そうするとその綺麗な顔の日本人は嬉しそうに知ってると答えた。
そして間髪入れずに伝える。
青い目の彼は死んだと。俺が原因だと。
聞いた瞬間膝を折って泣き出してしまった。
これで良かった。知らない方がいいこともあるが、知らないままで後悔することもある。
これで良かったんだ。
これは死神と呼ばれる日までの記録。
死を慈しむカミサマのお話。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
日日晴朗 ―異性装娘お助け日記―
優木悠
歴史・時代
―男装の助け人、江戸を駈ける!―
栗栖小源太が女であることを隠し、兄の消息を追って江戸に出てきたのは慶安二年の暮れのこと。
それから三カ月、助っ人稼業で糊口をしのぎながら兄をさがす小源太であったが、やがて由井正雪一党の陰謀に巻き込まれてゆく。
月の後半のみ、毎日10時頃更新しています。
勇者の如く倒れよ ~ ドイツZ計画 巨大戦艦たちの宴
もろこし
歴史・時代
とある豪華客船の氷山事故をきっかけにして、第一次世界大戦前にレーダーとソナーが開発された世界のお話です。
潜水艦や航空機の脅威が激減したため、列強各国は超弩級戦艦の建造に走ります。史実では実現しなかったドイツのZ計画で生み出された巨艦たちの戦いと行く末をご覧ください。

『影武者・粟井義道』
粟井義道
歴史・時代
📜 ジャンル:歴史時代小説 / 戦国 / 武士の生き様
📜 主人公:粟井義道(明智光秀の家臣)
📜 テーマ:忠義と裏切り、武士の誇り、戦乱を生き抜く者の選択
プロローグ:裏切られた忠義
天正十年——本能寺の変。
明智光秀が主君・織田信長を討ち果たしたとき、京の片隅で一人の男が剣を握りしめていた。
粟井義道。
彼は、光秀の家臣でありながら、その野望には賛同しなかった。
「殿……なぜ、信長公を討ったのですか?」
光秀の野望に忠義を尽くすか、それとも己の信念を貫くか——
彼の運命を決める戦いが、今始まろうとしていた。


奇妙丸
0002
歴史・時代
信忠が本能寺の変から甲州征伐の前に戻り歴史を変えていく。登場人物の名前は通称、時には新しい名前、また年月日は現代のものに。if満載、本能寺の変は黒幕説、作者のご都合主義のお話。
蘭癖高家
八島唯
歴史・時代
一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。
遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。
時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。
大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを――
※挿絵はAI作成です。
ワルシャワ蜂起に身を投じた唯一の日本人。わずかな記録しか残らず、彼の存在はほとんど知られてはいない。
上郷 葵
歴史・時代
ワルシャワ蜂起に参加した日本人がいたことをご存知だろうか。
これは、歴史に埋もれ、わずかな記録しか残っていない一人の日本人の話である。
1944年、ドイツ占領下のフランス、パリ。
平凡な一人の日本人青年が、戦争という大きな時代の波に呑み込まれていく。
彼はただ、この曇り空の時代が静かに終わることだけを待ち望むような男だった。
しかし、愛国心あふれる者たちとの交流を深めるうちに、自身の隠れていた部分に気づき始める。
斜に構えた皮肉屋でしかなかったはずの男が、スウェーデン、ポーランド、ソ連、シベリアでの流転や苦難の中でも祖国日本を目指し、長い旅を生き抜こうとする。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる