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9日目
いつしか
しおりを挟む米兵の訳の分からない言葉が耳に残る。
姿見が映した姿は醜い顔とボロボロの服。
担いだスコップは土と血と汚れて
まさに人の殺める姿にも見えていた。
その日から自分の顔が憎くて
無駄に顔を洗う。ガラスの破片に
映る姿を確認して、溜息をつく。
無駄な行為だった事は分かっている。
この容姿を少しでもマシな人間に戻したかったんだ。
もちろん骸のように爛(タダ)れて、腐って、
助けを求めるかのような天に伸ばした手が
無念にも固まって、朽ち果てる。
それに比べたらまだいい方だ。
そして気付く、骸と比べる生きた人間。
俺は人間として生きるのか
はたまたヒトであって、ヒトでは無い
何かに変わって生きていくのか。
それすらも分からずに見かけた骸を埋める。
今は生命維持と、埋葬を糧に生きる。
死にゆく者の処理をして生きるとは滑稽だ。
いつしかこんなことをしなくてもいい日が
来ればいいのにと、汚れた血と土で想う。
いつしか出なくなった嘔吐物や下痢が
人間じゃ無くなる感覚を更に強くした。
これは死神と呼ばれる日までの記録。
死を慈しむカミサマのお話。
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