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しおりを挟む暑さが何時まで経っても引かない8月の夜。
クールビズとは言えこの季節にはどう考えても合わない社会の鎧に身を包んだ僕は、見慣れた玄関を開け、帰宅をする。
「今日も疲れたなぁ」
そんな誰もいない一人暮らしの部屋に
山彦のように寂しくこだました。暑苦しい社会の鎧を少しはだけさせて、夕食の席に着く。今日のディナーは豪華だ。カップラーメンのビッグサイズ、惣菜の焼き鳥、500mlの缶ビール。最後の晩餐じゃないかってぐらい豪華なメニューだ。缶ビールはまだまだある、明日は休み今日は日頃見てるゲーム実況の動画を見て適当に過ごそうと思っていた。
豪華なメニューは幻のごとく目の前から無くなり、残っているのはショボいつまみだけ。
一服したら風呂に入りその計画をしようと
意気込んでいた。ベランダに行こうとした時、隣の部屋から男女の言い合いの声が聞こえた。毎度の痴話喧嘩だ。耳が痛い。
「全く飽きもせずよくやるな」
エアコンが部屋を冷やすまでの間、ベランダで煙草の煙を夜風に乗せる。最近変えたマルボロはやはり匂いがきつい。でもこれだと
1本で満足するからそれで良かった。煙草の灰が、少しずつこちらへ迫ってくる時に
隣のベランダに女性が逃げ込んだ音がした。
「あーあ、大変だねえ。」
そうやって煙を吐き出して独り言を呟いた。
女性はこのジメジメした8月の夜がもっと
湿っぽくなるぐらい、シトシトと泣いていた。どうやら彼氏と見られる男性は家を出ていったようだ。煙草の灰も終点へと着きそうなその刹那。夜風に乗った煙を隣のシトシトは気がついたようだ。
「それ…臭いんでやめてくれますか。」
泣き声混じりの苦情が来た。いつもなら
無視して家に入るところだが答えて見た。
「そりゃあすまんかったな。なに、お姉さん振られたとか?」
デリカシーが無い一般人ランキングなるものがあれば、僕は堂々の1位だろう。それぐらい
非人道的で、血が通ってないような心だった。それに対して女性はこう答えた。
「はい、たった今捨てられました。お兄さんは彼女とかいないんですか?」
顔が見えない緊急の時だけ破ることが許されるベランダの壁越しに会話は繰り広げられる。この状況下で彼女の有無を聞いてくるとは相当なメンタルだと思った。
「いないけど、なんで。」
煙草を咥えながら、モゴモゴと答えた。
その後に返ってきた返答に灰と共に
何かが落ちた気がした。
「今晩だけ、あなたの女にしてください。」
正直驚いた。ここまでストレートに
言うやつが居るのかと。しかし僕も最近ご無沙汰だし、悪くないなとは思ったが
振られたばかりの女性を鬱憤晴らしに
抱くのも都合がよすぎると頭を駆け巡った。
自分の中で選択肢を作るためにこう聞いた。
「関わりのない、素性も知らない隣人に抱かれるのは怖くないのか?あんたは何かを埋めたいだけだろう?」
すっかり小さくなったフィルターだけの
筒をニコチンの色に染まった水の瓶へ入れた。女性は間髪入れずにこう答えた。
「それでいいんです。今日はめちゃくちゃにされたい気分なんです。」
これが所謂、淫乱という生き物なのだろうか。性に対しての追求心は頭が下がるところがある。しかし僕も男だ、答えはこうだった。
「いいよ、おいで。酒でも飲んで少し話そう。」
そう言うと。はい、と答えて部屋へ戻る窓の音がした。僕も部屋へ戻るとすぐにチャイムがなった。ドアを開けると、壁の向こうで話していた目が真っ赤の名前の知らない隣人が
そこに立っていた。顔立ちは切り目で鼻立ちがよく、恐らくすっぴんなのだろうが美人であることはひと目でわかった。ショートパンツに胸の大きさが目立つ白のブラトップ。その上に申し訳程度の薄手のカーディガンを羽織っていた。背丈は平均的だが、全体的に持て余すように、憂いに熟れていた。
舐めまわすように見たあと
「どうぞ、入んな。」
と招き入れる。クロックスを丁寧に揃えて
僕の自宅へと入る。教養はいいようだ。
「まぁ適当に座んな。」
一応気を使って
女性をソファーへ座らせた。
冷蔵庫から残しておいた酒類を置き
それにテーブルに無造作に置いたつまみを
開けた。女性がキョロキョロ部屋を物珍しそうに見渡していたから、酒を持ち
「とりあえず飲もう。」
無理くり乾杯をして。クイッと1口流し込んだ。しかし、一向に飲もうとしない。
酒が飲めないのかと思い、重い腰をあげ、
缶ビールを下げようとした時
「大丈夫です。飲みます。あの…。」
缶ビールを掴んだまま、その赤い目は
まだ潤んでいる瞳で見つめてきた。
「なんだ?」
一旦、腰を落とし。話を聞くことにした。
逆に不思議そうな顔つきの隣人は
続けてこう言った。
「あの…。急に来て驚かないんですか?」
その言葉に1番驚いた。自ら、抱かれることを
希望していたのに急に来て驚かないと聞かれていることがなんとも矛盾していた。
女性というものは分からないものだ。
「めちゃくちゃにされたいんじゃないの?」
そう聞くと、急に顔が赤くなった隣人は
缶ビールを勢いよく開け、勢いよく飲み始めた。照れ隠しにしては度が過ぎていた。
僕もつまみを口に入れた後、ペースを
合わせるように飲んだ。
酒はあまり強くないのだろう。赤い目どころか顔全体が赤くなっていた。
トロトロになった目で隣人はこう言った。
「めちゃくちゃにされたいんです。今日は抱いてください。」
その言葉にため息を吐き出し
ソファーに座る隣人の顎を左手で持ち
無理やりにキスをした。
隣人は驚いたような表情の後
そっと目を瞑り、腕を僕の首に回し
体をくねらせながらキスに夢中になってきた。口を離し、いやらしい糸が2人から伸びていた。そして、一言。
「煙草の煙は嫌いですけど、この煙草の匂いは好きです。」
そう言うと次は隣人からキスをしてきた。
僕より激しく無理やりに舌を入れ、生暖かい唾液と唾液が交じり合うのが分かった。
最初は目を瞑っていた僕だか隣人が
どんな顔をしているのかと思って
少し目を開けてみた。隣人は未だに夢中で
目は開けているけど別の世界に行ってるような顔立ちになっていた。クールな面持ちとは違って、色気があり、いやらしかった。
僕はそのまま、ソファーへ押し倒し
唇を離したあとすぐに耳を甘噛みした。
隣人は初めて息を吐き出したか如く
切ない声で鳴いた。耳が好きなのだろう。
ひと噛みする度、体が唸る。声も段々と大きくなりソファーのカバーを握りしめていた。
「電気消そっか。」
そう言ってシーリングライトの電気の明るさを待機灯にし、ほんのり明るいソファーの上でまた見つめ合いキスをした。
激しいキスをしながら、薄着の隣人の上半身を指でなぞるように大事に触った。
まだ服の上だと言うのに、感じていた。
このジメジメとした8月の夜の気候のせいで
汗ばんだ肌が更に熱くなっていた。
時より恥ずかしそうな顔をするのも
とても綺麗だった。大きく膨らんだ
実ったものを手と舌で味わうことにした。
片手でギリギリ収まるぐらいの大きさだった。円を描くように手を動かし
寂しい口元をキスで紛らわせた。
キスをしながら全体にあった手は指へとシフトチェンジをし、感じやすい箇所へなぞるように触った。塞いでいる口から喘ぎ声が
かき消されていく、煙草の煙のように。
舌を絡ませていたその口元を
胸元に持っていき、丁寧に壊さないように
ゆっくりと舌を動かした。隣人は
更に大きな声を出し、触られていない片方を自分で愛撫した。相当欲しがっているのだろう。口元は胸を刺激しながら片手では
デリケートな部分へ手を伸ばしていた。
下着の上から中心の線をなぞると
更に感じた。下着の上からでも分かるぐらい
隣人の下は濡れていた。
「指、好き?」
そう聞くと。煌々(こうこう)とした顔で隣人は頷いた。
下着の中に中指と薬指で濡れている隣人に
確かめるように弄った。
もう準備はいいようだ。ショートパンツを脱がせ、下着を片足だけ脱がせた。
顕(あらわ)になったその姿に両手で
顔を隠し、恥ずかしがった。そそられた。
そそられた表情のお礼に用意した指を
挿入した。中はさっき触った肌より
何倍も熱く、締め付けられていた。
中でいやらしい音が瑞々しく響く。
出し入れをするだけで僕の右手は
隣人の愛液で染められていた。
するとワイシャツの袖を掴んで
「あなたのも味わいたい」
そう言って指を止めると
場所を交換し、身を預けた。
隣人はスラックスの上から
固くなった僕のものを愛おしそうに
撫でた。そしてカチャカチャとベルトを外し、下着の上から膨らんだ箇所目掛けて
横から咥えた。度々こちらを上目遣いで
見ながら右手でものを持ち、口で咥え、左手で僕の体を撫で回した。
「早く欲しいです。」
言い終えると、下着を脱がし
顕になった僕のものをしっかりと握り
自分のドロドロした唾液をつけ
ゆっくり扱(しご)き始めた。
小さな手は力加減も丁度よく
ご無沙汰な僕には感じてしまうものだった。
「気持ちいいですか?」
そう隣人が聞くので
あぁ、と答えた。
隣人が初めて笑顔を見せ
そのまま僕のものを口で咥えた。
隣人の口の中はねっとりしていて
ものをしゃぶるその音と温度で
僕は力が抜けてしまいそうだった。
ものの熱さに気付いたのか
最大まで大きくなったそれを見て
「欲しいです。挿入れてください。」
ものを握りながら真っ直ぐした目で
懇願した。僕はむしろ早く挿入れたくて
仕方が無かったから、すぐに体制を変え
使用期限ギリギリのスキンを取り出した。
「私、付けますね。」
慣れた手つきでスキンの封を切り
僕のものに乗せたあと、口でつけてくれた。
スキンの状態でも、隣人は唾液を
ふんだんに付けてくれた。
「ありがとう。挿入れるよ。」
「はやく。」
二人の会話が霧のように無くなったあと
熱くなったお互いの凹凸が交ざりあった。
奥まで入ったことが分かると
早く欲しいことが、自ら腰を動かすことで如実に分かった。それに応えるように
ゆっくり、そして徐々に激しく突いた。
隣人は自分で出した快楽の叫び声に
驚いたのか手で口元を隠して
それでも尚感じていた。
久しぶりの感覚に僕も
頭が吹っ飛びそうだった。
ふと、隣人の声が泣き声に変わっていたことに気がついた。様子を見ながらまた突いた。
「私、嬉しいんです。愛されたかったんです。」
快楽の声と涙を流しながら、隣人はそう訴えた。
「今日だけは。今日だけは愛してるやる。だから楽しめ。」
そう言うとキスして、更に腰を動かした。
そうして
お互いに気持ちよくなる瞬間が来ると
お互いに確かめ合うように果てた。
二人の体がビクついてる中
僕は名前の知らない隣人をぎゅっと抱きしめて、頭を撫でた。隣人は体を預け暫くそのままだった。体を離して、僕は果てたあとの処理をする間、隣人に先にシャワーを促した。
ソファーの上に畳んであった服を
持ちバスルームへと向かった。
サッと体を流した後見た姿は
数十分前家に来た時と同じ格好になった。
僕もシャワーを浴びた。
シャワーを浴び終わり
リビングに行くと、まだ待機灯の
薄暗い光の中でソファーで
放心していた。電気をつけ
隣人に向かってこう言った。
「気は済んだかい」
そういうと、隣人は
「ありがとう。救われました。」
気の抜けた缶ビールを飲み干した隣人は
帰ると言って、一礼して隣の部屋へ帰っていった。
同じく気の抜けた缶ビールの味が
なんだか切なく感じた
そんな8月の夜だった。
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