48 / 83
裏 あしながおじさまは元婚約者でした
叔父の陰謀 3
しおりを挟む「ねえ、あなた。どっちの宝石がいいかしら? 迷っちゃうわね。両方買っちゃってもいい?」
「ああ、好きにしろ」
「ねえパパ、パーティー用に新しいドレスを買ってもいい?」
「ああ、好きにしろ」
大介は妻子の言葉にうわの空で、同じ返事を繰り返す。
百貨店の営業が御用聞きに来るたびにこの騒ぎ。だけど『好きにしろ』という台詞を呪文のように唱えてさえおけば、この2人は上機嫌でいてくれる。だったら何度でも唱えてやるさ。
「ああ、好きにしろ。金はいくらでもあるんだから」
百貨店のカタログを手にはしゃいでいる妻と娘を横目に、大介は8人掛けのダイニングテーブル でパソコンを開いて株の銘柄選びをしていた。
――ここなら一発逆転できそうかな。
大損を一気に取り返そうと思ったら大穴狙いしかない。一発逆転にリスクはつきものなんだ。
『俺は上流社会への切符を手に入れた。“我が世の春“とはまさしく今のような状態を言うに違いない』
……大介がそんなふうに優雅な生活を享受していられたのは、最初の2ヶ月程だけだった。
雛子の未成年後見人となった大介は、会社の顧問弁護士を買収した結果、偽の遺言書で遺産の多くを我がものとした。
あげく、何も知らない雛子に相続放棄の書類にサインさせ、すべてを手中に収めることに成功したのだ。
表向きには大介が雛子のお金を管理していることになっているし、雛子本人も自分がどんな書類にサインしてお金の動きがどうなっているのかを把握していない。
だから学校に授業料を支払い、雛子には月に10万円の小遣いを振りこんでやるだけで文句も言わない。
そこから寮費や食費を引き落とされれば、手元には3万円ほどしか残らないのに……だ。
最初はまず、自分が遣いこんでいた白石工業のお金を補填しようと思っていた。
けれど自由になるお金を一度に手にすると、あっという間にタガが外れてしまう。
海外FX詐欺に引っ掛かったのが始まりだった。
損した分を白石メディカの金でどうにかしようと思ったのに、そちらは経理がしっかりしていてCEOと言えども簡単に流用できそうにない。
仕方がない、雛子から奪い取った金でどうにかしよう。
損を取り戻そうと先物買いで大儲けを狙い、新進企業の株に手を出したのも失敗だった。
失った分は取り戻せばいいんだ、大丈夫、どうにかなる。
そんなふうに損を取り返すために際どい投資を繰り返しているうちに負の連鎖に陥っていることに、大介は気づいていない。
大介が我が物顔でどんどん減らしている宗介の遺産が、本来なら雛子の物であったはずなのだ……ということにも……だ。
「ねえパパ、雛子ちゃんは帰ってこないの? 僕は雛子ちゃんがほしい。あの子と結婚させてくれるなら、僕は会社に顔を出してもいいよ」
ある日、長男の大地がそんなことを言いだした。
大介が白石メディカのCEOに就任してからは、白石工業には大地を名ばかりの社長に据えてあった。
しかし、いくら名ばかりとはいえ月に何度かは顔を出す必要がある。
それを拒んでいた息子が、雛子と一緒になれるなら社長としての務めを果たすと言っているのだ。
――そうか、大地が雛子と結婚したら雛子の資産は大地のもの。俺たちが遣いこんだお金も後で返せと言われることがない。
それは名案だとほくそ笑んでいると、
「ねえパパ、だったら私が朝哉さんと婚約したい。今は白石メディカのCEOはパパなんだもの。その娘の私のほうが朝哉さんには相応しいでしょ」
「まあ、素敵! そうなったら我が家は黒瀬家と姻戚関係になるってわけでしょ? ねえ、あなた、早速あちらに打診してちょうだい。白石の娘であればどちらでも構わないはずよ」
妻と娘もはしゃぎだす。
――なるほど、そうなれば八方うまく収まるな。
俺はやっぱりツイている。
結婚するには相手の同意も必要なのだということを考えもせず、降って湧いたようなアイデアに小躍りする大介なのだった。
0
お気に入りに追加
1,900
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。
青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。
その肩書きに恐れをなして逃げた朝。
もう関わらない。そう決めたのに。
それから一ヶ月後。
「鮎原さん、ですよね?」
「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」
「僕と、結婚してくれませんか」
あの一夜から、溺愛が始まりました。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。