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<< バレンタイン番外編>>
いつまでも恋人みたいに
しおりを挟む「楓花、いつも家事も育児も頑張ってくれてありがとう。そしてバレンタインデイに乾杯!」
「天馬もいつもお仕事と私達のお世話をしてくれてありがとう。とても助かっています。乾杯!」
天馬と楓花が訪れているのは市内の高級ホテルのレストラン。
夜景が一望できる窓際の席で、オレンジジュースでの乾杯だ。
楓花は28歳、天馬は35歳。もうすぐ結婚して丸4年になるというのに、2人は今も恋人同士のように仲良しで熱々。
それは主に天馬が楓花をそのように扱ってくれているからだろう……と楓花は思っている。
天馬は楓花を愛花の母親として尊敬しつつも1人の女性として尊重してくれている。
娘の前では『ママ』と呼びつつ2人になったら名前で呼ぶことを徹底しているし、人前でも手を繋いだり愛の言葉を囁くことに躊躇しない。
だから今日のバレンタインデイも、愛花を自分の母親である依子に預けて夫婦水入らずでのディナーに連れ出してくれたのだ。
『楓花、バレンタインデイに2人でデートしよう』
そう天馬からバレンタインデイの計画を聞かされたのは1週間前の週末。
5月の出産を控え疲れやすくなっている楓花をのんびり休ませてあげようと、天馬が愛花を連れて柊家に行った、その日の夜だった。
天馬は柊家で依子さんから2人目出産後の苦労について聞かされたのだという。
『2人目が生まれたらなかなか外食も出来なくなるって母さんが言ってたんだ。だから今のうちに、どう?』
そう言われて断る理由なんてない。
愛花はもうすぐ3歳。幸い両方の祖父母に懐いているし、楓花の仕事再開後は両家で過ごすのに慣れているから人見知りで泣くこともない。
お言葉に甘えて午後から愛花を柊家に預け、夫婦でのんびりとショッピングをしてからこのレストランに来たのだった。
「楓花、お腹は張ってない? 今日はかなり歩いたけど大丈夫か?」
天馬が大きくなっている楓花のお腹を心配そうに見る。
「うん、全然大丈夫。いつも託児所で子供達の相手をしてるんだもの」
楓花は今も柊胃腸科病院の託児所で働いている。
愛花の時と同じく、今回も3月いっぱいで休職して出産に備える予定だ。
出産予定日は愛花の誕生日の10日後。
お察しのとおり、天馬が結婚記念日に交わした約束の『半年後』をきっちり守って楓花を妊娠させ、今に至る。
そして今日も去年の結婚記念日と同じく……
「楓花、このホテルの部屋を取ってる。少し休んでいこう」
「えっ、そんな贅沢な!」
「何言ってるんだよ、今日はバレンタインデイだぞ。恋人同士といえばホテルでイチャイチャするもんだろう」
「恋人同士って……」
天馬は構わず立ち上がると、楓花の手を引いてエグゼクティブ用のフロアーに向かい、チェックイン手続きを済ませてしまった。
「大丈夫、激しくはしないから。ただ2人で仲良くしたいだけなんだ」
いいだろう? と楓花の顔を覗きこんだ時には既にエレベーターに乗りこんだあとで。
ーーいいも何も、もう決めちゃってるくせに。
だけど楓花だって断る気なんてさらさら無い。
こんなにお腹が大きくなった、もうすぐ結婚5年目に突入しようという妻を、今でも恋人みたいに愛したいと夫が言ってくれているのだ。
こんなにしあわせなことはない。
「天馬はいい旦那様だね」
「えっ? 急になんだよ。楓花だって素敵な奥さんじゃないか」
ーーほら、やっぱり私の旦那様は最高だ。
「ふふっ、天馬、少しくらいなら……激しくしたって大丈夫だからね」
すると天馬は目を丸くして楓花を見つめ、そしてフワッと微笑んだ。
「やっぱり俺の奥さんは最高だな」
部屋に入るとすぐにシャワールームに向かい、お互い泡だらけになって全身をまさぐりあう。
いつもは楓花が愛花と一緒に入浴するため、こんなふうにお互いの身体を洗いあうのは久しぶりのこと。
天馬は楓花のお腹を気遣いながらも、後ろから彼女の胸を揉み、そそり立った漲りをお尻にグイグイと押しつけている。
「は……っ、楓花の肌、すべすべで透明感があって……とても綺麗だ。胸もこんなに大きくなって、張りがあって……」
天馬は楓花の耳に唇を寄せ、賛辞の言葉を繰り返す。
合間に耳朶を甘噛みし、耳孔に舌を挿し入れピチャピチャと舐める。
「今日はどれだけ大きな声を出しても大丈夫だ。楓花、いっぱい啼いて」
右手を胸から離し、お腹をそっと撫でてから下半身へと移した。
そして花弁に触れたところで手を止めて、「ここじゃ駄目だな」と、なぜかシャワーで全身の泡を流しはじめる。
「えっ?」
驚いて振り向いた楓花を見て、天馬がニッと口角を上げた。
「立ったままじゃお腹がつらいだろ? 大丈夫、期待を裏切るようなことはしないから。ちゃんと気持ちよくしてやるさ。ただしベッドの上でな」
「きっ、期待って!」
顔を真っ赤にして否定したけれど、天馬には全てお見通し。
彼の手によって全身くまなく洗われたあとは、素直に手を引かれ、キングサイズのベッドに横たわる。
そこでも天馬は大切な宝物を手入れするみたいに、楓花の全身を優しく撫で、丁寧に舐め尽くした。
「あっ……ん……」
蕾をチロチロと舌先で舐められ喘ぎ声が洩れる。
「楓花、もっと声を出して、俺に聞かせて」
「やっ、でも……っ」
「大丈夫、ここにいるのは俺達だけだ。今夜は楓花のエロい声をいっぱい聞かせてほしい……ほら、もっと」
「あっ、ああっ!」
蜜壺に指が沈められ、ナカをグリグリと搔きまぜる。
クチュクチュと水音が大きくなるのを待って、天馬が漲りを挿入した。
ゆっくりと挿ってきたソレは、内側から肉壁を押し上げつつ、敏感な部分を的確に擦り刺激する。
それは決して激しくないけれど、ジワリジワリと甘い痺れを生み出していった。
「あっ、あんっ! 凄い、 擦れちゃう、もうっ……ダメっ!」
「ああ……さっきから楓花のナカがビクンビクン痙攣してるな。俺のを締めつけて、一緒にイきたいって誘ってるみたいだ……っ」
天馬の息遣いも激しくなる。
「ごめん、少しだけ……激しくするぞっ」
天馬は軽く腰を引き、そしてズンッと押しつける。
そのまま荒い呼吸で抽送を繰り返し、ラストスパートをかけた。
「ああっ、もう……イくっ!」
「はっ……楓花……っ!」
達したのは同時だった。
楓花のナカがキュッと締まり、天馬が低く呻く。
漲りがビクンビクンと跳ね、そして止まった。
ぐったりと横たわっている楓花の隣に天馬が倒れ込む。
そして肘枕で自分の頭を支えながら、楓花の髪を何度も撫でた。
「楓花……身体は大丈夫か? つらくない?」
「ん……大丈夫。気持ちよかった……」
天馬はフッと口元を緩めながら、楓花の髪を撫で続ける。
「なあ楓花」
「……ん、なあに?」
「来月の結婚記念日も、来年も再来年も……毎年こうやって2人で過ごそうな」
「うん、そうだね」
ーーうん、そう出来たらいいな、素敵だな……
「5月になって2人目が生まれて……子供達が大きくなって、俺達がおじいちゃんとおばあちゃんになっても……子供達や孫が羨ましがるくらいイチャイチャしような」
「ふふっ、子供達があきれちゃうかもね」
「それでいいんだ。まわりがあきれかえって恥ずかしくなるくらいの……いつまでも恋人同士みたいな2人でいたいって、俺は思うから」
「いいね、私もそれがいい」
多幸感と疲労感が楓花を包み込み、眠りにいざなっていく。
楓花がゆっくりと目蓋を閉じ、意識が白い世界に吸い込まれるその瞬間、バリトンボイスが囁いた。
「楓花、愛してるよ。誰よりも、一生」
ーーうん、天馬。私も愛してる。素敵なバレンタインデイをありがとう……
そう言いたかったけれど、言葉にする前に楓花の意識は夢の世界に引き込まれていった。
「楓花、ハッピーバレンタインデイ」
天馬が目を細めてそう囁くと、楓花にそっと口づけた。
だけど彼女はそれに気づかず、しあわせそうな笑顔を浮かべて眠り続けていたのだった。
Fin
*・゜゚・*:.。..。.:*・ .。.:*・゜゚・* .。.:*・゜゚・*
お久しぶりの天馬と楓花のバレンタイン番外編です。
前に書いた結婚記念日の番外編から1年近く経った話になります。
昨年の結婚記念日で2人目を作りたいと言った天馬が半年待てと言われ、しっかり半年後に仕込んで妊娠したのが今のお腹にいる子になります。
ちなみに2人目は男児で、名前は結婚狂奏曲のときに茂さんが考えた逞馬です。
そのあたりも追々番外編で書けたらいいな……とは思っていますが、なかなか着手出来ていません、すいません。
相変わらずちょっと強引だけど楓花ラブの天馬が書けて楽しかったです。
今回はアルファポリス に投稿中の恋愛もの9作品全てにバレンタイン番外編を書いたので、よろしければそちらもあわせてお楽しみいただければと思います。
それでは皆様、Have a Happy Valentine’s Day 💕
2021年2月14日
田沢みん拝
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一昨日この作品に出会い、いま読み終わりました。続編や番外編を期待しつつ読みかいしたいと思える作品ですね!医者系ラブストーリーが好きなので、ドストライクでした(*^^*)表現の仕方も気に入っているのでたの作品も楽しみです。
Yumiko様
本作を読了いただきありがとうございます😊
かなりの長編なのに、天馬と楓花の恋に最後までお付き合いいただけて嬉しいです。
医療系、お好きなのですね。
でしたら『塩対応の塩谷先生〜』も是非!
全話読了しました。一気に読み進めてしまえるので、私は完結されているものも好きです。
最初から好き同士の二人が、どうやってちゃんと想いを通じ合っていくのか。周りの人たちもそれをあたたかく見守って、読んでいる私も見守るような気持ちで夢中になっていきました。
しっかりトロトロ甘々シーンもあり、大満足な物語でした。
ありがとうございました。
むらかみちゃん様
感想ありがとうございます😊
完結作品は一気読みできるのが良いですよね。
幼馴染の2人の恋模様、楽しんでいただけて何よりです。
この作品は初期のものですが、楓花と天馬を温かく見守る周囲の人物を書くのが楽しかった記憶があります。
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