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【番外編】
中出し解禁日の話 (2) *
しおりを挟む快感の波がピークを迎える直前で突然動きを止められて、楓花は戸惑った。
「……天馬?」
天馬は楓花を見つめて視線を逸らさないまま、右手の中指で蕾を小刻みに揺らしてみせる。
「あっ……あ……」
再び再開された愛撫に小さく声を漏らすと、その途端にまた動きが止まる。
ーーどうして?
ここまで焦らされるのは初めてだ。
達する直前の寸止めが歯痒くて仕方がない。
「楓花……イきたいか?」
蕾の上でピタッと指を止めたまま聞かれて、必死でコクコクと頷いた。
あと少し……もう少しの刺激で絶頂を迎えることが出来るのだ。
快感の逃げ場を失って、思わず腰をモジモジと動かしてしまう。
それを待っていたかのように天馬が告げた。
「楓花……ナマで挿れたい」
ーーえっ!
「……ナマ?」
「そう……今日から9月だ。結婚してもうすぐ半年だろ?……だから……」
それで分かった。
ーーそう言うことか。
天馬はかねてから楓花と約束を交わしていた。
『結婚後半年はナマで中出しをしない』
それは4月から発足したばかりの託児所と託児センターをすぐの妊娠で中途半端に放り出したくないという楓花なりのケジメだったけれど、天馬はその日を心待ちにしていたのだろう。
結婚をしたのが3月だったから、9月1日の今日で確かに半年経ったと言える。
だけど結婚記念日が3月第3週だったことを考えると、正確には約半月のフライングだ。
楓花が鼻でクスッと笑うと、天馬が「なんで笑うんだよ……」と不満げな表情を浮かべる。
ーー可愛いな。
7つも年上の夫がどうしようもなく可愛いと思った。
きっと天馬は9月になるのを指折り数えて待っていたに違いない。
天馬だって本当は約束の日まであと半月あることが分かっていた。だけど待ちきれずに、自分の中で『9月になったら』と勝手に決めていたんだろう。
だから今日は仕事を早く終わらせて、15分かかる帰宅時間を半分に縮めて大急ぎで帰って来た。
だけどいざとなると半月のフライングが後ろめたくて……。
でも、だからって、あんな風に寸止めして焦らして、どうしようもない状態にしてからおねだりするなんてズルいと思う。
ーーそんなことをしなくたって、素直に言ってくれればいいのに。
だけど良く考えたら、楓花のほうが照れて素直になれなくて、『まだ半月あるでしょ』なんて心にもないことを言ってしまっていた可能性もあるし……。
だから天馬の作戦が正解だったんだろう。
今なら天馬のせいにして素直になれるから。
ーーもう、天馬の作戦勝ち!
「……いいよ」
そう答えたら、聞いた本人が「えっ?!」と目を見開いて驚いている。
楓花は天馬の首に腕を回し、耳許に口を寄せると小さく囁きかける。
「私もシたい……ナマで……シよ」
そのまま耳の穴をペロリと舐め、耳たぶをカプッと甘噛みしたら、すぐ目の前で彼の耳がカッと赤くなった。
どうだ参ったか、さんざん翻弄されたことへの意趣返しだ……と、ちょっとだけ溜飲が下がった気がした。
だけどその直後に蕾に置かれた彼の指が激しく動き出して……。
「いいよ……その前にイかせてやる」
あっという間に翻弄され返してしまって、やっぱり彼には敵わないと思った。
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