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【番外編】
大河と茜の話 (2)
しおりを挟むガーーーン!
「津田さん……彼氏持ちなのかよ」
「う~ん……彼氏かどうかは知らないけど2つ上の先輩でさ、中学の時、津田さんがタチの悪い連中とつるんでた時からずっと付き纏ってるのよ」
「えっ、タチが悪いって……彼女そんなに派手な感じじゃ無いよな」
「私は彼女と小学校も一緒だったんだけど、津田さんち、彼女が中学校に入学する前に親が離婚してるんだよね。それで中学校に入ってからちょっと派手にしてた時期があってさ、その時に不良グループのリーダーだった先輩と知り合ったんじゃないかな」
関わるとヤバイよ……という言葉を聞いた時には俺は立ち上がっていて、皆の驚きの視線を背中に浴びながら、足が勝手に動き出していた。
ーーなんだよ、ヤバいって……。
津田はみんなに迷惑かけてないじゃん。
真面目にバイトしてるんだぜ?
万引き少女に説教して自分のお金で精算しちゃうんだぜ?
俺がからあげ棒を買うとちょっとだけ笑ってくれるんだぜ?
アイツが……あんな風に可愛く微笑むヤツが悪いヤツなわけないんだよっ!
知らないうちに走り出していた。
こんなに全力疾走したのは、街でどこかのヤンキーに絡まれて天馬と2人で蹴りを入れて全力疾走したとき以来だ。
ーーくっそ……なんで俺、こんなに走ってんだよ!
そりゃあ津田さんに会いたいからだろう。
ーーなんで津田さんに会いに行かなきゃいけないんだよ!
そんなの……そんなの、気になるからに決まってる。
自分の中で自問自答しながら、ひたすらいつものコンビニへと向かう。
彼女が今日もいるかどうか分からない。
いたからって話せるわけでもないし、どうせからあげ棒を2本買って帰るくらいが関の山だ。
だけど、それでもとにかく会いたいって思ってしまったんだ。
コンビニに着いたものの、それからどうすればいいかノープランだったため、とりあえず店の外から茜がいるかどうか覗いてみる。
ーーんっ?!
レジの前にガタイのいい黒シャツ金ネックレスの男が立って茜に話しかけている。
サイドやバックの部分をかなり短く刈り込んで、トップをワイルドに立たせた『イカツイ系』ヘアスタイルの金髪野郎だ。
茜が迷惑そうに顔を強張らせているのに、金髪野郎は唇の端を吊り上げてレジの台に手をついている。
大河は表情を引き締めると自動ドアの前に足を進めた。
ピンポーン♪
自動ドアが開いて軽快なチャイムが鳴ると、茜が助かったというように「いらっしゃいませ!」と声を出し……それが大河だと気付くと表情を曇らせた。
それでも大河がカゴにおにぎりやパンを適当に放り込んでレジに行き、「からあげ棒を2本下さい」と言うと、金髪野郎をキッと睨みつけ、
「お客様の迷惑になりますので……」
低い声で言って、ケースからからあげ棒を取り出し精算を始めた。
「……また来るからな」
金髪野郎がそう言って出て行く間も、茜は唇を噛んで無言でピッ、ピッとバーコードの読み込みを続けている。
「津田さん、バイトって何時まで?」
「えっ?」
「今日は何時に終わるの?」
「……月白くんには関係ないでしょ」
袋を手渡しながら茜がぶっきらぼうに言う。
「関係あるよ。俺が待ってたいんだから」
「はぁ? 何言って……」
「いいよ、俺が外で勝手に待ってるわ」
「えっ、ちょっと、月白くん!」
茜が呼び止めるのも聞かず、大河は店から出て、ヤンキーの如くゴミ箱の隣でヤンキー座りをして待った。
「迷惑だから帰って」
しばらくして茜が外を覗いてキツい口調で言ったけれど、大河はツンと斜め上を見て無視を決め込む。
ずっとしゃがんだままで足が痺れてきたけれど、コンビニの前=ヤンキー座りがお約束だと信じている大河は気合でそのままの姿勢を続ける。
結局茜が仕事を終えて出てきたのは、それから1時間半も経ってからだった。
「アンタ、何やってるのよ」
水色フレームの自転車を引いた茜が大河の前に立ち止まる。その表情は見るからに怒っている。
「お前を待ってたんだよ」
「アンタにお前呼ばわりされたくないんだけど」
「俺だってお前にアンタ呼ばわりされたくねぇよ」
「……そう。それじゃあサヨウナラ、月白くん」
「ちょっ……ちょっと待てよ!」
フンッ!と鼻で息を吐いて背中を向けようとした茜を追いかけようと立ち上がり……
「……っ、アタタタッ!」
「えっ、月白くん?!」
膝を押さえて顔をしかめると、茜が自転車を置いて大河の顔を覗き込む。
「ちょっと、大丈夫?!」
「大丈夫……じゃねぇ!……足が……痺れた!」
その途端、茜がプッと吹き出して、「馬っ鹿じゃないの!」と言いながら大河を支えた。
「ほら、肩に掴まりなさいよ」
「駄目だ……女に支えられるなんて……ダセェだろっ!」
茜の手を払い除けようとすると、
「えせヤンキーがヤンキー座りして足を痺れさせてるだけで既にダサいっちゅうの!もういいから掴まりなって!」
脇から抱えられて観念した。
そして、恥ずかしいくせにちょっぴり嬉しかった。
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