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132、新郎の言葉
しおりを挟む司会者の言葉に引き続きマイクに向かうと、天馬は会場中を見渡してから口を開いた。
「本日はご多用のなか、私たちふたりのためにお集まりいただきましてありがとうございます。このように盛大な披露宴ができたのも、ひとえに皆さまのおかげと心より感謝申し上げます」
2人で揃ってお辞儀をすると、天馬はカンペも無しでスラスラと言葉を連ねて行く。
「感動するスピーチは、たった今、僕の可愛い奥さんがしてくれたんで、僕は気負わずに自分の思ったままを言わせていただこうと思います」
『嫁バカ!』、『早速のおノロケ!』、『よっ、相変わらずのラブラブですね!』と口笛と共にいくつも声があがる。辻の声も混じっていたような気がする。
「先ほど幼馴染で悪友の大河のスピーチでもあったように、僕は親友の妹の楓花に恋をして、それを誰にも言えずにいました。だって小さい頃からオムツ換えをして弟分みたいに扱ってた子を、今更好きになりましたって、なかなか言い辛いでしょう?」
会場からドッと笑い声が上がる。
「俺ってロリコンなのかな? だけどこんな感情を抱くのは楓花だけにだし……って葛藤した挙げ句、若い頃はヤンチャもしたし、周囲の皆さんをヤキモキさせて来ました。
恩師の皆様、いくつもの見合い話をお断りして申し訳ありませんでした。
父さん母さん、『俺は結婚しない、一生独身を貫き通す!』なんて宣言して心配かけてごめんな。
だけど、漸く本当に好きな女性を捕まえることが出来ました。絶対に逃さないんで安心して下さい」
『よしっ、でかしたぞ!』の掛け声は、茂と新之助の両方から同時に出た。
「教授、医局長、永らくお待たせしました。御心配をお掛けしましたが、もうお見合い写真は送ってこないで下さいね。彼女が俺の選んだ自慢の奥さんです。可愛いでしょ?」
『可愛い、可愛い!』、『お前には勿体無いくらいだ!』
教授や同僚から一斉に声が上がると、満面の笑みの天馬とは裏腹に、楓花は顔を真っ赤にして俯くしかなかった。
ーーちょっと天馬! 旦那バカを発揮しすぎ!
天馬はそんな楓花の手をギュッと握って見つめると、改めて会場全体に目を向ける。
「今までの人生、仕事一筋を貫いて参りましたが、このたびすばらしい伴侶を得て、本日のよき日を迎えることができました。
それもひとえにここにいらっしゃる皆様のお陰だと存じております。
なにぶん若輩者ではございますが、これからふたりで力をあわせて暖かい家庭を築いてまいりたいと思っておりますので、今までと変わらず、ご指導ご鞭撻をいただきますよう、お願い申し上げます。
最後になりましたが、ご列席の皆さま方のご健康とご多幸をお祈りしまして、私たち2人の挨拶に代えさせていただきます。本日は誠にありがとうございました」
2人がお辞儀をしたと同時に会場がワッと沸いて拍手が起こった。
『おめでとう!』、『お幸せに!』、『楓花ちゃん、天馬先生をよろしくね!』
沢山の拍手と祝福に包まれながら、楓花は改めて天馬と夫婦になった喜びを噛み締めていた。
ーー今の私は世界一の幸せものだ……。
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