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120、2人の年越し (1)

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 その年の楓花の年末は、柊家で御節おせちの準備を手伝って、そのままお泊まりさせてもらうことになった。
 いよいよ天馬のフィアンセとして、柊家のしきたりを学んで行くのである。
 もうすぐ天馬の妻に、柊家の嫁になるのだという実感が湧いて来て、身の引き締まる思いがした。

 クリスマスに天馬から改めて結婚の申し込みをされ了承すると、翌日の午後には2人で柊家を訪れ、盛り上がった周囲からお膳立てされ、あれよあれよと言う間に結婚式の日取りまで決まってしまった。

 新年度の4月になる前に書類手続きを全部済ませてしまいたかったため、結婚式を3月第3週の土曜日に行い、その前日の金曜日に2人揃って市役所に籍を入れに行くことにした。


「楓花ちゃん、本当にありがとう。天馬をよろしくね。本当に良かった……」

 2人でキッチンに立っていると、先日の訪問から何度も聞かされたそのセリフを依子がまた口にした。
 
「こちらこそ、至らない点もあると思いますが、よろしくお願いします。……あっ、数の子の薄皮を取りました。合わせ地に漬け込んじゃっていいですか?」
「ええ、お願い」

 柊家の御節は百貨店で購入した老舗のお取り寄せ品だった。前日の夜に御節の準備をすると聞いてエプロン持参で意気込んで来たのだけれど、準備と言っても、市販の御節では量が足りない数の子と栗きんとんを追加で作り、蒲鉾を切って紅白に彩りよく並べる……というだけだった。

 楓花の実家の月白家では手作りだったから、幼い頃から祖母や母に仕込まれてきた楓花には、栗きんとんくらいならお手の物である。
 緊張がとけて、会話も弾んだ。

雅美まさみさんも、楓花ちゃんに会うのを楽しみにしてるのよ。明日は賑やかになりそうね」
「私も楽しみです」

 雅美は天馬の兄である風馬の奥さんで、地元の有名和菓子屋のお嬢様だ。風馬とは見合い結婚だが夫婦仲は円満で、明日の昼前には1人息子の行馬いくまも連れてこちらに新年の挨拶に来るらしい。
 二世帯住宅と言ってもキッチンも玄関も別で、2棟が隣り合って並んでいるだけのようなものなので、依子も雅美もお互い仲良くしつつも干渉はせず、良い関係を築けているようだ。


「楓花、そろそろ行けそう?」

 男同士でビールを飲んで盛り上がっていた天馬がキッチンにひょっこり顔を出して来た。既にほんのり顔が赤くて上機嫌だ。

「あと少し、蒲鉾を切って洗い物をしたら終わるから待っててくれる?」
「そんなの俺がやるよ。洗い物って食洗機に入れればいいんだろ?お前は早くエプロンを外して」

 楓花が返事をする前にシンクから汚れた鍋やお玉を手に取り食洗機に並べ始める。

「あらあら、今まで洗い物なんて手伝ってもくれなかったのに。楓花ちゃん、天馬が待ちきれないみたいだから、もう一緒に行ってやってくれる?」

「でも……」

 躊躇している楓花のエプロンをほどき、依子がニッコリと微笑みかける。

「楓花ちゃんのお陰で殆ど準備は終わっちゃったから。除夜の鐘をつきに行くならそろそろ並ばないと。ほら、行ってらっしゃい!」

「母さんがこう言ってるんだし、楓花、行くぞ」

 楓花の手を取ってさっさと玄関に向かう天馬の後ろ姿を、家族全員がニヤニヤしながら微笑ましく見送って……。

「うんうん、依子、でかしたぞ」
「あの2人が結婚を決めてくれて本当に良かったよ」

 依子もソファーに腰を下ろすと、3人で改めて祝杯をあげたのだった。
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