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119、お願いなので結婚してください (2)
しおりを挟むーーえっ?このくだり、このまえ済ませたような……。
「うん……このまえ指輪をくれたよね。ありがとう、嬉しかった」
「違うんだ!」
「えっ?」
握る両手に力を込めて、天馬が必死な形相で訴える。
「この前のは確かにプロポーズだけど、フィアンセって呼びたいって言ったけど……今のはそうじゃなくて……っ!」
不思議そうに首を傾げる楓花の足元に片膝をつくと、左手の薬指に口づける。
そのまま真剣な表情で楓花を見上げて……
「もうフィアンセじゃ嫌なんだ。俺は楓花の夫になりたいし、楓花を妻と呼びたい。……結婚しよう。『いつか』とか『そのうち』じゃなくて、日にちを決めて」
「……えっ」
天馬を見下ろしたまま困惑の表情を浮かべる楓花に、天馬の顔色が徐々に血の気を失い涙目になっていく。
「もしかして……嫌……なのか?」
手を離し、ペタリと尻餅をつく。後ろでに絨毯に手をつき固まった。
「ちっ、違う!」
楓花が慌ててしゃがみ込み、天馬の膝に手を乗せる。
「嫌じゃないよ……私も天馬と結婚出来たら嬉しい。でもね……」
「でも?」
「天馬……前に言ってたでしょ? 結婚したら…その……ナマで……って」
ーーああ、そんなこと言ったなぁ。
「俺が……孕ませる……って言った」
「でね、まだお仕事を始めたばかりだし、4月からは新体制になるし、赤ちゃんが出来ちゃったら困るかな……って思って……」
「あっ……」
ーーそうか……妊娠出産して休職することになるのを心配してるのか!
天馬はガバッと身体を起こし正座をすると、再び楓花の手を取りギュッと握りしめる。
「……避妊します。ナマとか孕ませるとか軽々しく言ってごめんなさい。少なくとも新体制が落ち着くまで……半年間は絶対にもうそんなことを口にしないので……」
両膝に手を揃えて置き、
「お願いなので結婚して下さい!」
ペコリと頭を下げた。
「私も……」
楓花も正座して天馬と膝を突き合わせると、今度は楓花が天馬の手を握り……
「私も、天馬のお嫁さんになりたいです。よろしくお願いします」
「楓花……本当に?」
目を見開く天馬に微笑みかけ、コクリと頷いた。
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